公演情報
「ポニーテールの功罪」の観てきた!クチコミ一覧
実演鑑賞
満足度★★★★★
鑑賞日2025/10/18 (土) 18:00
座席1階
絵本を原作として、劇作家山谷典子が脚本を仕上げた。子どもに関する社会問題をテーマとした作品には定評のある山谷によって書かれた物語は、前向きな気持ちで劇場を後にすることができるという劇団銅鑼のテイストで実にコンパクトに、テンポよく仕上がっている。
舞台は西日本のとある高校。進路や人生に悩む3人の女子高生が中心だが、テーマに関する重要人物として駄菓子屋のおっちゃんが登場する。原作にもあるように、おっちゃんは身体は女性だが男性として生きるトランスジェンダー。このおっちゃんが、かつて経験した自らの苦しい思いを背に3人に向き合う。今でこそLGBTQは知られるようになってきたが、登場人物の親たちは恐らく昭和育ち。劇中でも「女の子は短大に行って郵便局に就職し、結婚して暮らすのが最大の幸せ」と言い放つ父親の姿がある。心と体の性が一致しない子どもたちにとっては、まだまだ生きづらい世の中である。今作はこうした現状や思いをストレートに、しかも明るく描いている。
劇団銅鑼の若手俳優がはつらつとしていて楽しい。冒頭とエンディングのダンスは、明らかに同世代の客層を意識したつくりだ。あとで聞けば、これから全国の中学や高校での上演を計画しているという。その熱意を買いたい。
また、山谷の発案というが、冒頭にスクリーンの作品上映前に見られる「映画泥棒」のパクリであるコントが前振りとして出てくる。携帯電話の電源を落として、といういつもの注意喚起なのだが、これがものすごい秀作だ。特に高齢者に多いが、携帯電話の電源を切らずに鞄に入れておき、惨事を引き起こすケースはいくども体験した。劇団側は通常、開演前にアナウンスや役者たちによるアピールとして注意喚起をしているが、効果は限定的。このパクリコントは、なかなかインパクトがある。
タイトルのポニーテールは一つのキーワードだけに表題に据えたのは理解できるが、「功罪」はその通りだとしてもやや硬い。また、東京の劇団だからだろうか、関西弁の切れが今一つだった。だが、秀作と言える前振りコントを加味して☆5つ。