公演情報
「とりあえずの死」の観てきた!クチコミ一覧
実演鑑賞
満足度★★★★
伊藤弘子さんの代表作になってもおかしくない作品。伊藤弘子ファンは見逃す訳にはいかない。メイク、衣装、美術、照明、役者陣、目一杯金も労力もかけた総力戦。これが「劇団1980」、通称ハチマルだ!
創立者である藤田傳氏が1992年に書き下ろした戯曲。
旧満洲国ハルピンにある中国から帰国できなかった外国人だけを収容する中国国営哈爾濱(ハルピン)外僑(がいきょう)養老院。4人の中国残留婦人が1989年の今も暮らしている。酒が飲みたくてたまらない伊藤弘子さん、日本からの手紙を待つ早野ゆかりさん、懐中時計の修理を待つ新井純さん、何かを隠している上野裕子さん、全員70代。養老院のスタッフとして韓国人の小谷佳加さんが大忙し。
4人にはまだ満洲国にいた頃の若い自分が分身のように見えている。
伊藤弘子さんには角田萌果さん。旦那である神原弘之氏の残した詳細な日記ノート。
早野ゆかりさんには光木麻美さん。関東軍でラッパを吹いていた曽田昇吾氏。
惚けかけている新井純さんには真っ赤なドレスの磯部莉菜子さん、山田ひとみさん。
上野裕子さんには山川美優さん。
メイクが秀逸。京劇やイタリアの道化師のような過剰な化粧が効いている。伊藤弘子さんも本当にそうなのか確信が持てない位。よくこんな脚本が書けたものだ。伝えようとするものが大き過ぎる。イタリア映画の感覚。
いつか日本に帰る日を夢見ている老女達。敗戦後の地獄を敵国で這いずり回って生き延びてきた。何もかもを失って残るのは遠い故郷への想い。きっと自分に手を差し伸べてくれる人がいつか必ずやって来る。
是非観に行って頂きたい。