トミイのスカートからミシンがとびだした話 公演情報 トミイのスカートからミシンがとびだした話」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 3.7
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  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    開幕と同時に若者たちの喧しい会話。祝いの場であるらしい。いつもの事だが職場を出てからの移動一時間は波乱の連続で(何しろ都内中心部の電車は遅延が多すぎ)、最後は初台駅からダッシュしたが受付預けのチケット発行の手間で間に合わず落胆。ロビーで場内の喧噪を耳にした。
    程なく入場するも、基本情報が提示されるのであろうこの場面の言葉が入って来ず、目と耳が段々と開けて来たのが5分後あたり。ストーリー理解のための情報を類推で獲得したのが中盤(普通に見始めてもそういうものかも知れぬが)。
    戦後の不良界隈で風俗商売から「抜ける」ためにミシンを購入したトミー(富子の源氏名?か渾名)を祝福する冒頭が、生きるために裏社会に身を置きながらも健気さののぞく初々しい場面だったのか、中には冷笑屋・茶化し屋が居たりもしたのか、起点が不明のため戯曲(作者の構成的狙い)の把握は不完全になったが、個々の場面自体は(特に後半は)引き込ませ、面白く味わい深かった。登場する若くも底辺に生きる者たちが、中には破滅志向であってもどこか深刻さが無く、後ろ向きな生き方を表明するそばから何故か前向きにも見えている。富子の独自な姿勢と目線が、救いを与えている。タイトルに滲むコミカルさが恐らく三好十郎の狙う所であった事は間違いなさそうである。

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    鑑賞日2025/11/14 (金) 18:30

    145分。休憩15分を含む。

  • 実演鑑賞

    満足度★★★

    娼婦の流転記と云えば『にっぽん昆虫記』のような作品を想像するが今作はもっと明るく元気。岡本喜八の初期作みたいにカラッとしている。娼婦じゃなくストリッパーだが、作品の雰囲気は『カルメン故郷に帰る』か。井上ひさしの『日本人のへそ』も想起。戦後、パンパンから足を洗った女性から見える世界。

    戦後の混乱期、パンパン(売春婦)で貯めた金で当時高級品だったミシンを購入、足を洗って田舎に帰る富子、通称トミイ(大田真喜乃さん)。パンパン仲間と元締めのヤクザの下っ端、流しのギターや顔馴染の刑事なんかが送別会。股ぐらでせっせと稼いだ金がミシンに化けたのだ。男の一人がからかう。「まるで『トミイのスカートからミシンがとびだした話』だな。」

    空襲で両親を失ったトミイと弟(森唯人氏)、妹(田村良葉〈かずは〉さん)は提灯屋の伯父(和田壮礼〈たけのり〉氏)、伯母(向井里穂子さん)の家に世話になっていた。東京で成功して地元で洋裁店を開くトミイを皆が歓迎する。新聞記者が取材に来る。敗戦から落ち込んだままの日本を希望の明るい灯りで照らしたい。女一人で成功したニュースが皆を勇気づけるかも知れない。断るトミイだったが無理矢理記事にされてしまう。

    東京でパンパンをやって金を稼いだことが写真付きで週刊誌に載る。陰口嫌がらせ落書き誹謗中傷、真面目な弟はグレ出し妹は精神を病む。伯父はトミイを性的な目で見始め、夜這いを繰り返す。この辺り『どですかでん』っぽい。地元の悪ガキの一人、中島一茶氏はカズレーザー系。

    地元に居られなくなったトミイは職を転々とする。衛生博覧会で踊る。優しかったパンパン仲間の律子姉(辻坂優宇さん)の言葉を思い出す。「何処にも居られなくなったらいつでもここに戻っておいでよ。」

    大田真喜乃さんは面白い女優。物語が進めば進む程魅力的に。サバサバしたトミイのキャラが立ってくる。信仰もしていないのに教会に通って祈る。『罪と罰』のソーニャなんだろうな。細かいことはどうでもいい。大事なことだけ間違えなければ。

    現代ならAV女優が引退して帰郷したらSNSで情報を拡散されるような話。堅気の仕事に就こうとしてもずっとネットストーカーに付きまとわれ身元をバラされてしまう。それでも何とか幸せに向かって生きていこうと思う。真っ直ぐな前向きな心だけが自分の武器だ。

    THE STAR CLUB 「THE WORLD IS YOURS」

    苦境に瀕した時 頼りは悪運だけ
    後戻りは不可能 覚悟してやったぜ 信じる事さ

    是非観に行って頂きたい。

    ネタバレBOX

    流しのギター、菊川斗希氏。戦争中、船が撃沈し海上を板に掴まって漂う。同じくその板に掴まろうとした戦友を振り払い死なせてしまう。それ以来手に感覚が戻らない。確かなものに触れたくてヤクザを刺して殺してしまう。
    ヤクザの若い衆(﨑山新大〈しんた〉氏)。
    ずっとトミイを探す男・源造(井神崚太〈りょうた〉氏)。
    パンパン仲間の目が見えなくなるベス(野仲咲智花さん)。
    赤ん坊を産むスガ(千田碧さん)。

    前半が単調で退屈、居眠りもいた。後半、大田真喜乃さんの魅力と共に作品も盛り上がっていく。前半に工夫が必要。衛生博覧会なんかはムードが面白かった。寺山修司の『血は立ったまま眠っている』みたいに東映っぽく荒っぽくやればいい。

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