11月歌舞伎公演「通し狂言 浮世柄比翼稲妻(うきよづかひよくのいなづま)」 公演情報 11月歌舞伎公演「通し狂言 浮世柄比翼稲妻(うきよづかひよくのいなづま)」」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 4.0
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  • 満足度★★★★

    代役の名古屋山三、錦之助には満足
    市川染五郎が怪我のため休演となり、名古屋山三役は中村錦之助になった。

    子役の頃から好きだった役者さんなので、私には楽しみな配役。少年時代、夏休みの杉の子会で演じた役でもある。あれから

    40年以上の歳月がたっていると思うと感慨深い。

    山三と、白井権八二役を替わる演出が多く、今回も当初はどうだったのだろう。

    当初は高麗屋親子共演が話題となり、幸四郎は幡随院と不破の二役変わり、中村福助も岩橋のち葛城太夫、お国、留め女の三役なので、染五郎も二役替わるつもりだったのかもしれない。

    当初のチラシを見ていないのでわからないが、本公演は別の役者が演じる脚本に書き換えられて白井権パは市川高麗蔵が演じていた。

    ネタバレBOX

    幸四郎が20代のころから観ているのだが、この人、首を不用意に振る癖があり、昔はよく劇評で指摘されていた。

    不破が花道七三で、編み笠を被ったまま、正体を現す前に小刻みにわざと首を振る場面、連続三箇所あるのだが、終わって切にも、まだ編み笠が揺れているのがとても気になった。

    名古屋山三との対決場面でも、台詞の間が幸四郎は歌舞伎のそれとは少し違うため、語尾が錦之助とそろわない。

    これも40代には何度も指摘されたが、いまはさすがに言う人もいないのであえて書かせていただく。

    幡随院長兵衛の幸四郎は別の芝居でも何度か手掛けている先代譲りの当たり役。

    子供の頃、似た提灯を持って、よく長兵衛と権八の一人二役の台詞を言って遊んだことを思い出す。

    鈴ヶ森の雲助の殺陣は歌舞伎ならではのコミカルな名場面。昔は下回りの役者の人数が多いからワーツとわいてくるように見えたそうだがどうだったろう、今回も遜色なく感じたが。

    山三浪宅に花魁道中が繰り込み、雨漏りを避けるため天井から盥を吊る南北らしいちょっとバカバカしい趣向に、品よく美しい錦之助の山三がおおどかな味を出す。

    お國と葛城の早変わりは先の歌右衛門は疑うほど実に早かったそうだが、今回はさほど早く出てこない。

    女形の福助。奥女中岩橋が鼻緒のきつさに足を痛め「アイタタ・・・」の台詞で客がどっと笑う。なぜか地声でコミカルに言うからである。三枚目の役でもないのに。

    岩橋はまだ遊女にはなっていない段階なのにまるで奥女中に化けてるみたいではないか。

    山三浪宅でも、下女お国が父親との会話で、急に地声でさめきったように蓮っ葉にしゃべるのでコントみたいで客が笑う。

    けなげな下女ではなく、わざとぶりっ子を演じてるように見えてしまうのはいただけない。

    若き日の玉三郎の初役のお国も観ているが、こんなにコミカルではなかった。

    この人のこういう意識して外した演技は勘三郎と納涼歌舞伎で共演するようになってから頻繁にみられるようになった。

    いずれ、この人が歌右衛門を継ぐのだろうが、成駒屋の芸風が随分と変わってしまうものだと思う。

    「お役を勤める」と言い、丁寧に行儀よく楷書のような六代目と比べたら、前衛書道のような大胆なところがある。

    歌右衛門が指導していたら仰天しそうだが。

    それも当世風と言うんでしょうかねぇ。

    脇では、石塚玄蕃の片岡市蔵が憎めない敵役でならしたおやじさんの「かたいっちゃん」そっくりの役者になってきた。

    お国の父親、坂東彌十郎も年輪を重ね、手堅い。

    錦之助の長男、中村隼人の美しい振袖新造は4世時蔵が生き返ってきたようだ。

    高麗屋の高弟でベテラン松本錦吾、幸太郎の健在なのも嬉しい。









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