彼方の島たちの話 公演情報 彼方の島たちの話」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 3.0
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  • 実演鑑賞

    満足度★★★

    『ガラスの動物園』が衝撃的だったのでヌトミックにも興味を持った。観ていてNOKKOみたいに派手に踊る女優(原田つむぎさん)がローラだったことに気付いて驚く。東野良平氏の登場で盛り上がったが作品をぶち壊すまでにはいかず。凄く伝え辛い感覚をいろんな方法を模索して無理矢理表現しようとした作品。自問自答しながら途中で打ち消したり話をやめたり、ギターを爪弾いたりディストーション・ノイズを起こしたりやめたり、親子の関係性を謝ったりやめたり、忘れていたことを思い出したりやっぱり否定したり。Public Image Ltdの「Fodderstompf」を聴いた時の感覚。

    ネタバレBOX

    実験作なのか失敗作なのか。楽器演奏抜きで演ったらどう見えたのか?ただのつまらない繰り返しか。範宙遊泳の『心の声など聞こえるか』でも思ったが曲が中途半端。効果音と劇伴の扱い。もう曲で勝負して欲しい。PiLの「METAL BOX」のようにやってくれたら文句なし。曲がメインで演劇は彩るエピソード位で丁度いい。

    15年前、離婚した父親(金沢青児氏)から携帯に電話が掛かってくる。友達と3人で海に遊びに来ていた稲継美保さんは出なかった。かき氷を食べていたから。その後すぐ、父親は日本海に面した自殺の名所の崖で飛び降り自殺。父が大好きだった新作缶ビールを買ってその崖にお供えに行く。夜の9時、そこに片桐はいりさんが飛び降りようと立つ。「待って!」と止める。一度はとどまったものの結局飛び降りてしまったようだ。片桐はいりさんの娘(原田つむぎさん)は海外にいて、メールで自殺することを知らされたがどうにも出来なかった。1万年前にここで飛び降り自殺したムー(東野良平氏)が現れる。ムー大陸とかアトランティス大陸をイメージしたような服装。ムーは寝ている父親(長沼航〈わたる〉氏)の左腕を刺し、逃げ出して自殺した。父親への異常な恐怖心。父親トキサカは黒人ハーフのような風貌で崖を彷徨って自殺志願者に「待て!」と言い続けている。原田つむぎさんが弾き語りで歌う「彼方の島たちの話」が良い曲。父親が船を呼び皆を乗せて島に向かう。着いたのは家、誰の胸の心にも残されているそれぞれの家。稲継美保さんは思い出す。昔、フェリーでラムネを父親に買って貰ったが転んで海に落としてしまった。怒った父親は母親を殴打する。娘をきちんと見ておかなかったお前の管理不行き届きだと。アル中でDV癖の父親はいつも母親を泣かせた。その夜、稲継美保さんは父親を殺そうと思う。だが出来なかった。結局両親は離婚してアル中の父親はどうしようもなくなって自殺した。ここは死者達の意見交換会。ずっと同じ所、同じ気持ちをぐるぐる回っているだけ。どれだけ時間を掛けても執着は剝がれない。死んでいない者達が演奏を続ける。ギターの細井徳太郎氏、ベースの石垣陽菜さん、ドラムの渡健人氏。石垣陽菜さんがキャッチーなベースラインを繰り返す曲が良かった。こういう話にはベースが合う。ジャー・ウォブルのように世界を低音で支配して欲しい。渡健人氏は昔の知り合いに似ていた。

    台本とバンドへの指示が文字で全て背後に表示されるのだが逆効果では。役者は丸暗記した台詞を言っているだけだし、バンドの演奏は全く指示と合っていない。
  • 実演鑑賞

    ヌトミックによる新作音楽劇。会場のシアタートラムは横長に広いブラックボックスが特徴的だが、アクティングスペースに何段かの高低差をつけ、いくつかに分けたようなシンプルな舞台セットがよく映え、スタイリッシュな空間に仕立てられていた。俳優6名に、ギター、ベース、ドラムのスリーピース構成でバンドが加わり、俳優が台詞を喋ることと、バンドが音を奏でることが並列的に取り扱われる演出が印象的。演技パート、演奏パート、それらが重なるパート、が主な構成要素だが、ひとつの作品として統一感があり、見応えがあった。特にバンドが音圧を上げて演奏するシーンに俳優たちの演技が加わった際の「最大瞬間風速」はとても強かったと思う。

    ネタバレBOX

    海岸から飛び降りた父とその娘。その娘は、同じ海岸で父同様に飛び降りようとしていた女性と出会う。等々。死者や希死念慮、死生観などが物語の中心にある。ただし、私の個人的な解釈としては、「死」よりも「境界」の話のように感じられた。その境界をどう行き来するか?(現実的には行き来できないのだが…)。あるいは、その境界を超えるために、人間の叡智や文化はどう貢献できるか? という。それは、演劇と音楽、演じることと奏でること。その境界について考えることと重なり合う部分があるのかもしれない。

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