公演情報
「散歩する侵略者」の観てきた!クチコミ一覧
実演鑑賞
イキウメ初期の代表作と言える日常に危機が忍び寄るSF作だが、他劇団による挑戦を楽しみに見た。(若手の面々とは承知だが出演陣に前観たポッキリくれよんズ所属俳優あり一定のレベルは約束と保険は掛けた。)
つくづく良い脚本だと改めて気づかせてもらった。小さい地下空間あくとれを狭いと感じさせず脚本の描く世界をどうにか具現していた。欲を言えば若手の演技は一本気で脚本に僅かながら仕込まれた笑いを成立させるに至らず、人物の行為のリアルな組立てという点ではやはりもう一歩であったのだが、危機の実態を凡そ把握し共有するに至った段階での、人間模様(事態の解決に邁進、とはならない。何が解決なのか糸口は皆目見えないからである)=本作の真骨頂と言える場面でそれを挽回するかのような瞬間が訪れる。脇筋であるが「所有」概念を奪われて平和を叫び始めた先輩(かつては世を斜に見たフザケたアウトロー)の変貌に失望しながらも執拗に追っていた後輩が、全てを飲み込んだ上で自分は付いて行く、と言う。そしてラスト、本筋において夫を乗っ取られた妻と「彼」の新たな愛からの決断の場面。
ギリシャ悲劇を持ち出すのも何だが、この普遍的テーマにこのような結末を与える作品、類似品は二つ生まれないだろう。SFでしか作れない仕掛けだが何故か切なくも懐かしい。
よく上演してくれた有難うと、えらく素直な気持ちが湧いてきたものであった。