ノア版 人形の家 公演情報 ノア版 人形の家」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 3.8
1-5件 / 5件中
  • 満足度★★★★

    イプセンの『人形の家』には,しっかりとしたストーリーがある。
    下北沢小劇場「楽園」で,イプセンの『人形の家』を観る。

    演劇史を研究していると,チェーホフとならんで,このノルウェーの作家が頻繁に出現する。明治時代,西洋の完成度の高い作品として,日本に紹介され,気が付けば,女性の自立を促すためとか,家庭の在り方への問題提起の意味を含んで,何度も上演されている。

    演劇というものは,たしかに,戯曲を忠実に,演技するというだけではない。しかしながら,自由に演出し,自由に演技していく場合,もとの戯曲=テキストが,多少しっかりしたものでないと,うまくいかないものだろう。そういう意味で,翻訳劇には,登場人物名が覚えにくいなど違和感はあるが,筋は明瞭だ。

    作品は実在した人物からヒントを得ている。イプセンは,ある女性から,夫の病気ゆえ借金話をもちかけられる。「すべての悩みをご主人に打ち明けなさい」とすすめるが,金は貸さなかった。結局,彼女は,うつ病になってしまう。劇中のノーラは,もう少し別の話で,借金はできたが,にせ借用書事件に追い込まれる。

    「パパは,あたしを赤ちゃんと呼び・・」「あなた(夫=ヘルメル)も,私を人形として,この家であつかっていた!」。イプセンの『人形の家』のテーマは,このような会話に収束されるだろう。妻であり母親であるのに,その責任を放棄して,家を出ていくノーラは,この後,しあわせになれるだろうか。彼女は,明確に,自分には,子どもを育てる自信がないのだと述べる。さらに,子ども以上に,自分は,自分という人間を最初からやり直したい,という。そう,もう,人形ではいたくないのだ。

    ノアノオモチャバコの演出は,とてもおもしろい。この小劇場は,普通のように,前に舞台があって,客席があるものとはちがう。劇の種類によっては,真横から,観客が,じっと劇を観ることが可能である。まず,入場すると,おどろいたことに,ノーラは,すやすや舞台中央の揺り椅子で眠っていた。その後,太陽やら,月をイメージした,おもちゃが,ぶらさがって,回転している中央で,演技をする。最後,左手奥にある観客席を,思いっきり蹴飛ばして,家を出ていく。

    イプセンの『人形の家』には,しっかりとしたストーリーがある。そのために,ノアノオモチャバコ版においても,その基本構造は,びくともしない。

    二組の男女が,物語の骨格を作っている。まず,主役のノーラと,その善良かもしれないが,見栄っぱりで,信念も,誠実さもどこか薄弱な凡夫であるヘルメルがいる。これに対し,ノーラに金を貸したどこか胡散くさいクロクスタと,ノーラの幼なじみのこれ又ひとくせあるリンデ夫人の組み合わせである。

    意外とおもしろいのは,クロクスタが自滅していくのを,どういうわけかリンデ夫人は,救う展開となっている。「偽借用書事件」やら,「同窓生ゆえのなれなれしさ」に,ヘルメルは,銀行頭取になるや,クロクスタを解雇し,かわって,未亡人のリンデ夫人を事務職にすえる。この時点では,クロクスタとリンデ夫人は,あきらかに敵対しあう関係なのである。しかし,リンデ夫人は,クロクスタを救う。

    かつて,クロクスタは,リンデ夫人に夢中になるが,はねつけられた。リンデ夫人は,そのクロクスタのかわりに銀行で職を得たのだ。でも,仕事をしてみたかったのは事実だが,欲をいえば,クロクスタの子どもたちがかわいくて,その母親にもなってみたかったのだ。そのためには,遅くなったが,リンデ夫人は,クロクスタの求愛を受け入れることは,まちがっていないと考える。

    ただ,このリンデ夫人の機転のきいた判断で,ヘルメル・ノーラ夫婦は,一転危機を回避できたように見えるが,かえって深い決裂に向かってゆく。ノーラが,実際に,家を出ていくには,戯曲の中ではわからない複雑な思いがきっとあるだろう。ヘルメルは,彼なりに,自分のまちがいをなんとか詫びたいという気持ちにまでなった。しかし,時すでに遅し。ノーラは,傷つき,家を出るのだ。対話らしいものが,ひとつもなかったヘルメルが,変わるとは思われないのだ。

  • 満足度★★

    アレンジ部分が逆効果
    どう人形の家を料理するのかと期待して観に行ったのだが、
    これだったらストレートにやれば良かったのではと思ってしまった。
    ただ、ノーラや元凶のヒール役の男性は良かったし
    作品自体のテーマは伝わってきたので
    そこまでは悪くないはずなのだが…。
    とりあえず他の方のレビューにもあるようにAKBを取り扱ったり
    奇をてらったようなぶっこみ方にしか感じととれないものが残念。
    あとは道化っぽいセリフまわしの役の人も
    純粋に技術不足で本来の魅力が発揮されてない
    かのように感じてしまってそれも残念。
    ともあれセンスは悪くないのにそれを生かしきれてないなぁ
    というのが率直な感想か。

  • 満足度★★★★

    よかったです
    かなりアレンジされていましたが、実によかったです。女性の自立というよりも、セレブ妻の無責任・無頓着な自分探しですな。

  • 満足度★★★★★

    合わなかったです。
    たぶんサッカーファンが野球の試合を観に行ったようなものだと思います。よくわかりませんでした。

    けれど、よくわからないだけじゃいけないなと、この芝居を好んで足を運ぶ人達のその理由を知りたいなと、帰り際に色々と調べてみました。

    すると、この『人形の家』というのが元々はえらい古い話であること、フェミニズムからのウーマンリブ運動のきっかけになったこと、などなどととても参考になりました。まったくもってウキペディアに感謝です。

    更に辿って行き、ポルノグラフィからエロティカへ、さらにはやおいやらボーイズラブと、これまで曖昧模糊としていたものまで勉強することができ非常に参考になりました。

    ただ自分にはやっぱり合わなかったです。
    役者さん達の技量はすばらしかったです。

    ネタバレBOX

    AKBネタ辺りなどちょいちょい意味がわかりませんでした。

    物語を現代風にわかりやすくしたいというのであればもっと別の場所でそうするべきだったんじゃないかと思いました。舞台を現代の日本にするだとかですね。
  • 満足度★★★★

    上質の人形の家
    4年前に観た人形の家とはかなり違った印象を持ってしまったが,どちらも良質の人形の家であることには変わりない。この芝居では早川さんが秀逸,表情,しぐさ,台詞,すべて素晴らしい出来だったと思う。原作を読んだことのない方も,この芝居をみれば作者の主張を理解できる。やはり,ノアの翻訳ものは上質である。

    ネタバレBOX

    いまの日本という切り口でAKBのくだりだが,彼女たちが人形であるかはともかくとして,この芝居の本質からはずれてしまったように思える。また,ノアの芝居に下ネタはいらない。この2点だけがちょっと不満で残念。

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