公演情報
「風のやむとき」の観てきた!クチコミ一覧
実演鑑賞
満足度★★★
昭和50年(1975年)、演劇集団円を設立するも持病の肺結核の悪化で入院中の芥川比呂志55歳。病室には見舞い客と劇団関係者、夢の中では亡くなった者達が訪れる。病床で『夜叉ヶ池』の演出方法をひたすらに追い求める執念。それを甲斐甲斐しく支える妻。
主演・芥川比呂志役、石井英明氏がカッコイイ。久米宏と三田村邦彦を足したような。
その妻に高橋理恵子さん。MVP。この作品の文鎮。
弟で作曲家の芥川也寸志に瑞木健太郎氏。寺山修司っぽい。
語り手である孫娘に大谷優衣さん。綺麗。
亡くなった弟に和田慶史朗氏。
劇団制作担当に近松孝丞氏。
仲谷昇役に中田翔真氏。
35歳で自殺した芥川龍之介、まだ7歳だった芥川比呂志。子供達に宛てた遺書には「若しこの人生の戦ひに破れし時には汝等の父の如く自殺せよ。」と。若くしてとんでもない十字架を背負わされてしまった。
実演鑑賞
満足度★★★★
鑑賞日2025/09/27 (土) 14:00
座席1階
演劇集団円の創設者の一人、芥川比呂志の演劇への情熱を後輩たちが戯曲化。劇団創設半世紀の記念企画であり、パンフレットにもある通り若手劇団員たちに創設者の思いを引き継いでいくことが狙いだ。劇団の歴史を伝承する舞台で、どちらかというと劇団員自身に向けたやや内向きの舞台であるが、若手俳優たちも多数出演。芥川の実像を伝える舞台としては興味深い。
芥川は病を抱えながら演劇人生を生きた。泉鏡花の「夜叉ヶ池」は劇団で唯一の演出作品であり、池袋のサンシャイン劇場のこけら落とし演目だったという。今作では、病を押して無理を重ねながら、上演に至るまでのさまざまな出来事が明らかにされる。蜷川幸雄など著名な演出家らが実名で登場するのもおもしろい。
蜷川もそうだったが、舞台制作では演出家は一大権力者だ。しかも、芥川は劇団創設者。昭和という時代背景もあって、そのワンマンぶりは控えめな表現だったとは思うが十分に伝わってくる。蜷川は瞬間湯沸かし器のように怒りを爆発させることもあったが、芥川もそうだったのかもしれない。
今回の舞台は芥川3兄弟ら家族や劇団員たちの姿が描かれ、群像劇に仕上がっている。だが、芥川の演出ぶりがどうであったかを詳しく知ることはできない。それは本筋ではないのかもしれないが、彼の演出のどこがすごいのか、どんなところが客席の魂を揺さぶったのか、もう少し表現されていてもよかったのではないか。「夜叉ヶ池」にしても、仮に蜷川がやっていたらどんな舞台になったのか、興味をひかれるところだ。