風のやむとき 公演情報 風のやむとき」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 3.5
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  • 実演鑑賞

    満足度★★★

    昭和50年(1975年)、演劇集団円を設立するも持病の肺結核の悪化で入院中の芥川比呂志55歳。病室には見舞い客と劇団関係者、夢の中では亡くなった者達が訪れる。病床で『夜叉ヶ池』の演出方法をひたすらに追い求める執念。それを甲斐甲斐しく支える妻。

    主演・芥川比呂志役、石井英明氏がカッコイイ。久米宏と三田村邦彦を足したような。
    その妻に高橋理恵子さん。MVP。この作品の文鎮。
    弟で作曲家の芥川也寸志に瑞木健太郎氏。寺山修司っぽい。
    語り手である孫娘に大谷優衣さん。綺麗。
    亡くなった弟に和田慶史朗氏。
    劇団制作担当に近松孝丞氏。
    仲谷昇役に中田翔真氏。

    35歳で自殺した芥川龍之介、まだ7歳だった芥川比呂志。子供達に宛てた遺書には「若しこの人生の戦ひに破れし時には汝等の父の如く自殺せよ。」と。若くしてとんでもない十字架を背負わされてしまった。

    ネタバレBOX

    芥川比呂志が最後に演出した泉鏡花の『夜叉ヶ池』。昭和53年(1978年)7月5日〜28日ABC会館ホール、昭和54年(1979年)3月1日〜6日サンシャイン劇場。昭和56年(1981年)61歳にて逝去。

    劇中劇である『夜叉ヶ池』がどうにも面白くなさそう。実際の公演に準じたのだろうが、観たいとは思わなかった。劇中の芥川比呂志の台詞、「それを本気で信じていなければ本物にはならないんだ!」。とても役者達が竜神だの眷属だのを信じているようには見えなかった。何か安っぽい。

    内藤裕子さんの『カタブイ、1995』は凄まじい作品だった。だが今作は焦点がずれていると思う。「演劇集団円の創立50周年記念作、創立者芥川比呂志の称揚」というお題に雁字搦め。芥川比呂志に何の思い入れもない観客からしたら「芥川龍之介の息子が演劇やってたんだな」くらいのもの。しかも亡くなって44年、皆知っていて当然の感覚はずれている。岸田今日子にしたって今は判らない人の方が多いだろう。知らない連中にその凄さを知らしめるホンでないと意味がない。知ってる連中だけ相手に商売していくには無理がある。リアルタイムでなく後追いで知ったものだって充分人を興奮させられる。重要なのはその伝え方。

    やはり芥川龍之介の存在こそが重要な呪縛であり蜘蛛の巣状に張り巡らされた彼の作品内で藻掻き続ける子供達。比呂志は弟達とジャングル探検隊を組織してそこからどうにか逃れようと舟を漕ぐ。襲ってくるのは戦争、弟が命を落とす。それでも先に進まなければならない。心破れたら死あるのみ。何処までも何処までも漕ぎ続けこの川を先に進まねばならない。その先に夜叉ヶ池が見えたのか?
  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    鑑賞日2025/09/27 (土) 14:00

    座席1階

    演劇集団円の創設者の一人、芥川比呂志の演劇への情熱を後輩たちが戯曲化。劇団創設半世紀の記念企画であり、パンフレットにもある通り若手劇団員たちに創設者の思いを引き継いでいくことが狙いだ。劇団の歴史を伝承する舞台で、どちらかというと劇団員自身に向けたやや内向きの舞台であるが、若手俳優たちも多数出演。芥川の実像を伝える舞台としては興味深い。

    芥川は病を抱えながら演劇人生を生きた。泉鏡花の「夜叉ヶ池」は劇団で唯一の演出作品であり、池袋のサンシャイン劇場のこけら落とし演目だったという。今作では、病を押して無理を重ねながら、上演に至るまでのさまざまな出来事が明らかにされる。蜷川幸雄など著名な演出家らが実名で登場するのもおもしろい。

    蜷川もそうだったが、舞台制作では演出家は一大権力者だ。しかも、芥川は劇団創設者。昭和という時代背景もあって、そのワンマンぶりは控えめな表現だったとは思うが十分に伝わってくる。蜷川は瞬間湯沸かし器のように怒りを爆発させることもあったが、芥川もそうだったのかもしれない。
    今回の舞台は芥川3兄弟ら家族や劇団員たちの姿が描かれ、群像劇に仕上がっている。だが、芥川の演出ぶりがどうであったかを詳しく知ることはできない。それは本筋ではないのかもしれないが、彼の演出のどこがすごいのか、どんなところが客席の魂を揺さぶったのか、もう少し表現されていてもよかったのではないか。「夜叉ヶ池」にしても、仮に蜷川がやっていたらどんな舞台になったのか、興味をひかれるところだ。

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