公演情報
「Go West!」の観てきた!クチコミ一覧
実演鑑賞
満足度★★★★★
鑑賞日2025/08/29 (金) 18:00
予定より7分程遅れて開演したが、開演時間が押したことが気にならない程、濃密で、大いに馬鹿らしくて笑える場面もあったが、深く考えさせられる作品だった。
今回の劇は正直、子どもも沢山出ており、演技経験のそんなになさそうな人も出ている市民劇といった感じが否めなかったので、そんなに期待していなかった。
しかし、実際に観てみると(まぁ、出演者の子どもによっては、明らかに歌う場面で、音階がズレていたり、台詞がたどたどしくて、苦笑レベルの子もいなくはなかったが)、思っていたよりも、完成度も高いし、プロの役者とそうでない人や、子どもの明確な線引きが出来ない程、演技も自然に見え、歌も上手くて、眼を見張るものがあった。
今回の劇は、西部劇のミュージカルだが、その組み合わせだけでもかなり詰め込んでいると感じるのに、今年戦後80年ということもあってか、西部劇なのだけれど、人を殺さず、敵を作らず、西部劇ではお決まりのならず者、お尋ね者、ギャング的なものは出て来ない。
最初敵役として出てくるならず者たちも、そうなってしまった背景が語られたり、主役たちの側の言い分、ならず者側が悪いことを続ける言い分が語られ、どっちの言い分が絶対に正しいとかではなく、お互いのことをもっと知ろうと努力し、相互理解するよう努め、心を開いて話し合えば銃などで撃ち合わなくて済む。
もっと平和的に大きなトラブル、戦争、紛争であっても解決できるといったテーマが盛り込まれていて、ただの古典的なアクション西部劇ではなくて、面白かった。
互いに憎しみあい、怒り、お互いの正義や守るべき者の為、大義名分があれば、銃を取って人を殺すことだって正当化される。
そういったことが肥大化していくと、かつて西洋の植民地政策や、それに習った日本が現在の韓国や中国、台湾、南アジアを一時期支配し、言語の強制等といったこと、ジハード(聖戦)の名のもとに戦争や紛争が正当化され、安全保障の名のもとに核保持が正当化され、原発が正当化されるといったことに繋がっていく。
そういう風になっていかない為にも、相手のことを考える想像力を働かせ、お互いのことをもっと知ろうと努力し、相互理解するよう努め、お互いに心を開いて話し合い、偏見や相手を下に見るのを辞め、まずは相手のことを理解するため、主義主張やその背景になっていることを丁寧に聞き、忍耐強く、何かと言うとすぐ武力に走らず、平和維持のため、争いや諍いよりも相手と対話し続けることが人類が平和でいられることなんだという平和でいる為の理念としては素晴らしいと感じた。
但し、西部劇の時代は、荒くれ者、ならず者が街をうろつき、ゴロツキ共も相当いて、更に野生肉食動物もその辺をうろつき、ギャングもいてといった状況の中で、劇中の保安官補佐の青年のように簡単に銃は捨てられない時代だったと感じた。それに街の人たちも自分の身は自分で守らないといけない危険と隣り合わせの時代が西部劇の世界だと感じた。
以上のようなことを踏まえると、簡単に西部劇の舞台となっている時代に、銃を捨て、武器を捨て、相手を互いに理解しようと努め、話し合うことで解決できるというのは、現実的に考えると余りに夢物語だと感じた。
ただ、この劇はあくまでフィクションなので、今の時代にあって、この世知辛い世の中で、緊迫した世界情勢の中、不安定な世の中の中では、せめてフィクションの中ぐらいは幾ら理想的過ぎたとしても、そういう理想を夢見ていても良いと思うし、更にそれが現実のウクライナ侵攻の問題やイスラエルとパレスチナとの問題に関しても、いつの日か平和的な話し合いによる解決が実現すれば良いと思う。
それに、核抑止ではなく、核廃絶の声が今よりもっと世界に広まってもらいたいし、原発回帰が正当化されるのではなく、将来的には再生可能エネルギーに移行していってもらいたい。
その為にも、今回の劇のテーマである自分の意見を持つ、一生懸命考える、思考停止しない、安易に多数意見に同調しない、人類の可能性を諦めない、お互いを認め合い、尊重し合う、武力、暴力は事態を悪化させるだけ、根気強く話し合うことこそが平和への道といったことを心に刻み、考え続けることが大事だと思った。