宮澤賢治・宛名のない手紙 公演情報 宮澤賢治・宛名のない手紙」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 4.7
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  • 実演鑑賞

    満足度★★★★★

    座席1階

    宮沢賢治の名作をオムニバスのようにつないで作り上げた舞台。注文の多い料理店、銀河鉄道の夜、セロ弾きのゴーシュ、よだかの星……。宮沢少年と妹を主人公に、なぞ解きをするがごとくの列車の旅が舞台で展開する。

    パンフレットによると、脚本・演出を担当した菊池准の今作は四半世紀ぶりの登場という。こんなふうに宮沢賢治を読む経験はなかなか得難い。今作自体が一つの叙事詩のような舞台に仕上がっていて、宮沢賢治の新作のような趣もある。特に、登場した一つ一つの作品の心がうまく合わさってつながっていて、印象深い物語を構成しているのがとてもいい。
    夏休みの土曜日、子ども連れの来場者も目立った。小さい子には少し難しいかなと思ったが、この舞台を見て宮沢賢治の世界に足を踏み入れるきっかけになったら、それはとても素晴らしいことだ。約2時間の舞台だが、小さな観劇者のために15分の休憩をはさんで2幕にした心遣いもよかったと思う。

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★★

    メイン三人のセリフの長々しいこと、そして三人とも詰まることもないしゃべりでさすがと感じ。
    脇役の役者達のダンスパフォーマンスも素晴らしく見応えあり有り。
    エレクトーンの演奏もストーリーにマッチしていてとても良かったです。

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    超人気、流石来年50周年を迎える老舗劇団、風格がある。

    「ケンタウルス、露を降らせ!」
    ポランの広場、カラスウリの実をくり抜いて作った青い烏瓜のあかり。
    イーハトーブオとは宮沢賢治が心の中に創った理想郷。岩手をもじったとされている。ある日、そこに暮らす山猫博士のもとに差出人不明、宛名のない手紙が届く。チュンセとポーセの兄妹の日々について書かれ、今もチュンセはポーセが何処に行ったのかを捜し続けている、と。それに非常に興味を持った山猫博士は手紙の中のヒントを辿り時空を越えて兄妹を捜す。それらしき兄妹が乗っていたのは銀河鉄道の客車だった。だが二人は否定する。けんじととし子だと。

    山猫博士デステゥパーゴは金子由之氏、流石の名演。
    けんじは音楽劇 『母さん』が記憶に残る町屋圭祐氏、少年役青年役を演らせたら無双。
    とし子は『クリスマス・キャロル』で気になっていた上林未菜美さん、水を得た魚。
    赤江隼平氏のかっこうの鳴き声。
    聡鳥圭さんのキレのあるダンス。
    森島美玖さんのほんわかした華。
    江﨑泰介氏のたぬき。
    洲本大輔氏のクールなヴァイオリニスト。
    市川奈央子さんの三毛猫。

    下手で生演奏のキーボード、佐藤拓馬氏。冨田勲を思わせるシンセサイザー交響楽が青白く光り有機交流電燈の電子幻想曲を奏でる。『どんぐりと山猫』の喧々諤々どんぐりギャグ、『よだかの星』の鳥達の歌が最高。

    宮沢賢治の世界を丁寧に表現。選ばれた作品は人間と動物との関係性が強いもの。『よだかの星』が一際響いた。
    宮沢賢治の作品は今では日本テレビの子会社となったスタジオジブリで全作アニメ化地上波TV放映して欲しい。
    素晴らしい作品だった。

    ネタバレBOX

    第一幕『手紙 四』『銀河鉄道の夜』『どんぐりと山猫』『注文の多い料理店』。
    第二幕『よだかの星』『セロ弾きのゴーシュ』『双子の星』『永訣の朝』『無声慟哭』。

    『どんぐりと山猫』でジブリ調にスタート。
    『注文の多い料理店』ではポールハンガーを役者達がこなす。ベネチアンマスクを被ったスタイリッシュな獣達。有名な話だが面白く観れる。
    そして第二幕、『よだかの星』は凄まじい。生来の醜さ故に蔑まれ嫌われ侮蔑され罵倒されるよだか。残酷な鳥達はよだかを差別排除する。そして鷹からは殺すと予告される。どうしようもなく追い詰められたよだかは自分より弱い虫共を惨殺して気を晴らす。羽虫や甲虫が怯えて逃げ惑う様を高笑い。だがその自分の弱さ醜さに自分自身がいたたまれなくなって涙を零す。死のうと思う。何処までも空を飛んで行く。上林未菜美さんの名演。生きるものが業と向かい合う姿。
    そこから牧歌的な『セロ弾きのゴーシュ』は無理があるだろうと思ったがなかなかの腕力で強引に引っ張る。楽隊の楽器をそれぞれの形に切り抜いた平面の板で表現。妙な味がある。

    全ての存在を幸福にする論理。
    ポーセのことを本当に想うのならば全ての生き物が本当に幸福になる方法を探し出すこと。

    宮沢賢治作品の感動は自己犠牲の美しさにある。法華経に説かれる薬王菩薩の焼身供養、自らの身を焼いてこの世を照らした説話。だが他者の尊い犠牲の上に成立する歪んだ社会をセンチメンタリズムで昇華してみせてもこの歪み自体は変わらない。宮沢賢治はその先にある築くべき社会を銀河鉄道から下車したジョバンニに託した筈。まことのみんなの幸いを。皆の為に自分を殺して生きるのは御免だ。多数の幸福の為に少数の犠牲が強要されるような世の中はうんざりだ。それがどんなに感動的でも。

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