公演情報
「月から抜け出したくて」の観てきた!クチコミ一覧
実演鑑賞
満足度★★★★★
大西氏が劇団銅鑼に脚本提供した前の作品(クラウンを題材にした)も静かな味わいある一編だったが、両劇団合同と銘打った本公演での本作は体感的に重量があり、噛み応えあり味わい堪えがある。大仰な台詞はない。全てが日常の範囲に、庶民の身の丈の内に留まっているが、「人生」の時間の幅や、意味的な豊かさ・・・それらが「過ちを犯した」後の人生を送る者の「抑制」の静けさと平穏さの中に、逆説的に激しく満ちて来るのを感じさせる。
中庸という言葉が輝きを持って見える時というのは、こういう人生の形を想像する時。
銅鑼とハンバーグ両集団の役者(若手・ベテランを問わず)の持つ原石の輝きも、改めて見出した思いで胸熱である。
実演鑑賞
満足度★★★★★
鑑賞日2025/08/24 (日) 14:00
座席1階
劇団銅鑼が東京ハンバーグと初めて組んで行った舞台。罪を背負った人に寄り添って更生を助ける保護司がテーマで、保護司の高齢化や減少が問題になっている実情や、ニセ電話詐欺の闇バイトなど最近の状況を踏まえて丁寧に構成されている。
物語では、高齢のため引退を決意した保護司がかつて自分が担当した男に保護司の職を引き継ごうとする。保護司の仕事を引き受けるかどうかを考えるために、男は保護処分の若者の面接に同席する。現在は小さいながらも工務店の社長を務めす男だが。かつては暴走族の番長。過去の自分を思いながら話を聞き、引き受けるのに前向きかなと思ったが、「自分のような者が人の人生の転換に踏み込むなんて」と葛藤する様子がとてもリアルだった。
リアルと言えば、ニセ電話詐欺の闇バイト勧誘もさもありなんと思う感じで現実味があった。こうした社会派劇に取り組んでいる東京ハンバーグのち密さと、どこか優しいエンディングが特徴の銅鑼が融合すると、こういう舞台になるのだと思う。
保護司と言えば近年、逆恨みをした保護観察処分の男に保護司が殺害された事件が記憶に新しい。今作で登場する保護観察処分の人たちは概して、素直な若者たちだ。保護司ときちんと向き合い、支援を受けることで一歩ずつ前に進んでいく物語だから、あえて事件に触れる必要はないと思う。
劇中、客席のあちこちで涙をふく場面があった。脚本の力強さのなせる業だと思う。かつての銅鑼の舞台では、同じ感動場面でも少し説教じみているかのように受け取られかねないところがあったが、今作は物語がシャープになってそんな感じが全くしなかった。今回の両劇団のタッグは成功したと思う。