父と暮せば 公演情報 父と暮せば」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 4.3
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  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    2回目。
    かなり遣り取りの密度が上がっている。瀬戸さおりさんの表情の変化が凄い。松角洋平氏の台詞一つ一つを受けて瞬時に変えてみせる。『この世界の片隅に』のすずさんのような素直さ。観客は自分の心を隠し切れない生まれついての天真爛漫さに惹かれていく。大きな饅頭にかぶりつく幸福そうな顔。
    そして松角洋平氏の原爆への怒り。全ての被爆者の無念を代表して天に向かって怒声を上げる。こんな残酷な苦しみ、人間の歴史には決して必要のないもの。人間はこの地獄を教訓として未来を変えていかないといけない。戦争は憎悪の捌け口、その先に広がる光景は自らをも滅ぼす。
    必見。

    ネタバレBOX

    瀬戸さおりさんは下瞼に赤いアイライナーを引いている。それが最後のシーンでは消えている。心境の変化を表しているのだろう。
    松角洋平氏は長南亮に似ている。山本麟一っぽくもある。

    他人の不幸は所詮他人の不幸でしかない。同じく自分の不幸も他人からしてみれば他人ごと。だが不幸が主観的なものではなく共通の敵だとしたら。
    不幸が病気ならきっと治癒できる。
  • 実演鑑賞

    満足度★★★★★

    鑑賞日2025/07/14 (月) 14:00

    座席1階

    前回の山崎一と伊勢佳代をはるかにしのぐ出来栄えだったと思う。特に、瀬戸さおりの成長が著しい。こまつ座への出演が定着しつつある彼女が、演出の鵜山仁に鍛えられたのだろうか。どちらかというと兄の存在がある中で一歩引いていたような印象があった瀬戸さおりが脱皮を遂げたように見えた。
    今回は舞台セットもチェンジし、新作並みの対応で臨んだという。瞬間の差で生死を分けた父と娘。父は最初から登場するがけして幽霊などではなく、主人公の娘・美津江が勤め先の図書館で偶然会った男性に思いを寄せるその心の動きが、現生に帰ってきた父の手足、心臓を形作ったとセリフの中に盛り込まれている。その思いが弱まっていけば父は娘のそばに存在することはできない。娘の恋愛応援団が存在理由である父だ。
    だが、美津江は一瞬にして命を奪われた友人らを思い「自分だけ幸せになることはできない」と恋愛を拒んでいる。舞台は4幕あるが、再終幕で美津江の本当の胸の内が語られる。これが圧巻だ。
    瀬戸さおりと身長差がかなりある松角洋平が、少しだらしないところもあるが包容力のある父親を、瀬戸を全面的に受け止めるような形でうまく演じている。松角の包容力が瀬戸の才能を引き出したのではないかと思えてくる。

    先人も書いていたが、サザンシアターという広い客席だけに空きが目立ったのは残念だ。再演であるということも影響しているのかもしれないがもったいない。この親子は自らの生死も含めて運命を「解決した話」と言っている。だが、どうしてこのような結果を招いたのか、どこかで止められるところはなかったのか。この芝居を何度も見て考えたい。戦争は国と国との戦いであり、各国の国民に勝者はいない。自国民の優越性を掲げて戦った歴史を、今こそ胸に刻むべきだ。

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    『父と暮せば』は黒木和雄の映画で観て成程と思った。2018年、山崎一氏&伊勢佳世さんの舞台を俳優座劇場で観て度肝を抜かれた。いや映画の比じゃない、これは舞台で観ないとヤバイ奴だ。2021年紀伊国屋サザンシアターにて同キャストで再演。その時は二回観た。(今思えばもっと無理してでも回数観るべきだった) 。2022年、ゴツプロ!presents 青春の会第二回公演としてシアター711にて佐藤正和氏&中薗菜々子さんで観た。同じ戯曲でもこんなに変わるのか、と奥深さに唸った。
    そして今回、松角洋平氏&瀬戸さおりさんの布陣。山崎一氏&伊勢佳世さんではもう観れないのか···、との想いはあるが。こまつ座通ってる連中からすれば瀬戸さおりさんの評価は絶大だろう。一体この名作をどう解釈するのか?

    流石の出来。皆泣いていた。超満員じゃないのは残念だが。今日は初日、ここから先は伸び代しかない。何処まで行くのだろう?楽しみ。

    ちょうどジェームズ・キャメロンが広島長崎の原爆映画を製作し自ら監督することを発表。「まるで観客が被爆を実体験するかのように徹底的にリアルに描く」と宣言。「この地獄に観客は耐えられるだろうか?」。世界中が初めて原爆の怖ろしさを知る機会になるのかも知れない。それを経験した日本人達が遺した膨大な作品群。『父と暮せば』もまた新たに再評価されることは間違いない。

    必見。

    ネタバレBOX

    やはり井上ひさしの武器は笑い。とにかく観客を笑わせて安心させてからぶち込むのが真骨頂。重要なのは笑いのリズム。

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