客家(HAKKA)~千古光芒の民~ 公演情報 客家(HAKKA)~千古光芒の民~」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 3.0
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  • 満足度★★★

    もう少し、ドラマ性がほしかった
    なかなかのキャストが揃っていて、期待したのですが、期待が大き過ぎた分、やや薄味な舞台という印象が拭えませんでした。

    もう少し、骨太で、うねりのある舞台を期待したのですが…。

    とにかく、一幕の終わりまで、人物紹介の域を出ない展開に、やや辟易してしまいました。

    音楽座で活躍された、畠中さん、吉野さん、吉田さんは、共に、演技に安定感があり、安心して拝見することができました。特に、吉田さんの光る眼力、口跡の良さは、特筆すべきものを感じました。

    宝塚で、長く貴重な名脇役を務められた末沙のえるさんは、客家の歴史の生き証人としての風格が素晴らしく、舞台の要のようでした。

    伊礼さんは、相変わらず、芸達者です。出す声からして、きちんと役作りされていて、拝見する度、どれだけ引き出しの豊富な役者さんかと感嘆してしまいます。ただ、今回の役は、脚本の人間描写が希薄だったので、伊礼さんの熱演が空振りするところがあり、残念でした。敵役とは言え、やけにメイクが怖かったのにも、違和感を覚えました。単なる悪役ではない筈なので、もっと本でも、メイクでも、フビライの人間を深く浮き彫りにしてほしかったと思います。

    坂元さんは、以前より、演技力が向上され、趣の違う二役を好演されていましたが、歌になると、何をやっても、同じ美声になってしまうのが、今後の課題ではと思ったりします。

    水さんは、初めて生の舞台を拝見しました。演技は、なかなか達者でいらっしゃると感じましたが、歌が弱いのと、ダンスが、役の思いを体現するには至らず、まるで、ダンス発表会かのような、稽古の過程が見えてしまった点が残念でした。

    若い客家の青年を演じた俳優さん達も、それぞれ、光るものがあり、将来楽しみな人材が揃っていて、嬉しくなりました。

    全体的に、見た目は、壮大な歴史ドラマ風なのに、それぞれの役の本の掘り下げ不足で、そこそこ美味しい、出汁の取れていないインスタントみそ汁の味わいでした。

    ネタバレBOX

    場転換の暗転代わりのような、男性のダンスが、今回は、ややドタドタとうるさくて、逆効果のような気がしました。
    TSではよく使われる手法ですが、こういう踊りは、あまり音を立てずに、静かに舞ってほしいと思います。

    怪我をして、客家に助けられる蒙古のフビライと、客家の娘、クウショウの心の通い合いをもう少し、丁寧に描写していたら、もっと、奥行きもドラマ性もある作品になっただろうにと惜しまれます。

    戦うことを嫌っていたクウが、守るべき者を守るために、やむなく、戦う決心をするまでの、心の軌跡の描き方も、駆け足で、登場人物の誰かに感情移入するまでに至らせない、脚本の荒仕事が目につきました。

    もっとブラッシュアップをして、いつか再演してほしい作品です。

    文テンショウが監禁された牢屋の格子を、照明だけで、見事に表現した技法は、美しく、感心しました。

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