仮面夫婦の鑑 公演情報 仮面夫婦の鑑」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 4.0
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  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    前回同様、無料公演。ご案内をいただき最終日に観劇。打ち上げの案内もあったが、残念ながら それは遠慮させてもらった。脚本は、横山拓也 氏(iaku)で、妻と夫の価値観の違いを交差させ、それぞれの心情を巧みに描いた夫婦劇。

    物語は 夫が、自分の長期出張中に妻が美容整形(二重)を施したことを詰るところから始まる。そして 自分はその仕返しに「中の下」の顔に整形した。その結果、会社に行けなくなり失職、現在は失業保険で生活している。妻は自分の顔にコンプレックスを持っており、二重にすることで自信がついた。妻の たかが二重、されど二重の夫の かみ合わない会話が面白可笑しく展開する。妻は、自分の顔が平凡だから 夫は安心していた、要は この程度の女の相手は 自分しかいないと見下していたのだ と言う。漂流するような口喧嘩の結末は…。
    (上演時間50分)

    ネタバレBOX

    舞台美術は、あまり広くない空間に2人が住んでいる家(リビングルーム)を作り込んでいる。中央にソファとぬいぐるみ、上手に置台、下手に丸テーブルと椅子。上手と下手に出捌口があり一方に簾状のカーテンが掛かっている。

    夫婦というか 男女の性差や立場、事情の異なる人間の苦悩や葛藤を、関西弁の喋りで軽快に紡ぐ。論理的で鋭い観察眼、そして思いもつかない豊かな発想で描く。妻は、容姿に少なからずコンプレックスを持っており、引っ込み思案だった。そこで 美容整形を行い自分の外見を変えた。それは内面的な満足になり、気持も前向きになれた。一方 夫は何の相談もなく美容整形をしたことに腹を立て、自分も整形をした。そこには確固たる意思はなく、その結果 会社に行き難くなり 失職し家でぶらぶらしている。夫婦喧嘩の最中に たびたび鳴る夫の実家からの電話が、姿なき仲裁のような緩衝になっている。そして妻の妊娠という事実に諍いが うやむやになる。

    妻は、絵画モデルも引き受けるほど積極的な人生を歩み始めた。絵は喫茶店に飾られ、それを見た夫は驚いた。なんとヌード、妻は しらばっくれたが身体的な特徴を指摘され開き直った。夫は 妻のヌードを衆人に観られたくない。夫の言い分から、妻は自分だけのモノ といった所有物的な思いが垣間見えてくる。確かに夫の思いも理解でき、その善し悪しに決着が付けられない。人間や題材を多面的に捉え、登場人物の感情を普遍性をもって立ち上げる巧さ、そこに人間の本質が滲みでる。

    日は流れ、妊娠8か月の妻。「外見より内面が大事」と言われるが、それは建前で 本音は外見も内面も両方大事。夫婦の諍いは堂々巡りを繰り返し決着は付かない。しかし子は鎹とはよくいったもので、まだ生まれてもいないのに諍い事はうやむやになり夫婦円満。何処にでも在りそうな日常の揉め事を面白可笑しく紡ぎ、観ている人の感情を擽る。ちなみに、夫の父は亡くなり、その遺産(保険)で母が海外旅行を楽しんでいる というブラック ユーモアも…。
    次回公演も楽しみにしております。

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