公演情報
「三たびの海峡」の観てきた!クチコミ一覧
実演鑑賞
満足度★★★★★
日韓日朝関係にまつわる演劇を何故か担う事となっているシライケイタ氏が尹東柱を題材にした前作に続き青年劇場に書き下ろした(原作あり)作品との事で、ここは観ておこうと足を運んだ。シライケイタ氏が必ずしも日韓関係史や在日の生活史に精通している訳でも体験的に在日との濃い接点を持つ訳でも(恐らく)ないことは過去作を眺めて窺えた事だったが(私もそれほど詳しい訳ではないが日本人の平均に比べればかなり濃い方だろうとは思う)、氏がこの領域にこだわり製作を続ける姿勢に敬意を払う所あり。そして今作にて、原作があるとは言え、シライ氏の手になる日韓現代史界隈の作品として大いに納得できる舞台と相まみえた事を感慨深く思っている。(何だか上からに聞こえそうだが実際そう感じてきたので...)
内容についてはまた。
実演鑑賞
満足度★★★★
鑑賞日2025/05/27 (火) 14:00
座席1階
帚木蓬生の原作を舞台化。青年劇場は何度もこの作品を上演しようとしたが実現しなかったという。在日コリアンなど韓国の戯曲をいくつも手がけてきたシライケイタとのコンビで、実現に至った。
青年劇場の重鎮・吉村直が主人公を演じた。この人ならというキャスティングだったと思うが、他の作品でも重要な役を演じている人だからちょっと既視感もあった。次の世代へのバトンタッチも重要課題だ。
さて、福岡の炭坑で強制連行・強制労働を強いられた戦時中の朝鮮の人たち。人間扱いされず、虐殺され、いつ自分が殺される番になるかもしれないという状況に、主人公のハ・シグンは脱走を決意する。だが、逃げる際に労働監視役に見つかり、取っ組み合いの末に絞殺してしまう。シグンは幸運にも同胞の多くいる地域に逃げ込み、そこで働く中で日本人女性と恋仲になる。戦争が終わり、シグンは身重の彼女を故郷に連れて行き結婚しようとするが、彼の祖国ではいくら彼女が「朝鮮人の女になる」と覚悟を決めていても受け入れられるはずはなかった。
二つの国を隔てる海峡は深く、悲しい。舞台ではこうした悲恋の物語が中心となっている。パンフレットによるとシライは帚木の許可を得てラストシーンを変えたという。これは見事な成功を収めている。鮮やかな色に染められた最終場面に悲恋を超えた深い人間物語を描ききっているからだ。
先の戦争の日本人の振る舞いを記録と記憶に残す努力は明らかに不足している。いくら戦争中とはいえ、そんなことがあったのは日本人としては受け入れられないと感じる若い世代も多いだろうから、記憶を継承していく場所は絶対に必要だ。そういう場所を失うと、都合よく歴史を書き換えて発言する人が増える(もう増えている)。ガザにしてもウクライナにしてもそうなのだが、せめて辛酸の歴史をつくった日本は、同じことを繰り返さない覚悟がいる。その意味で、青年劇場の愚直な努力を称賛したい。