なべげん太宰まつり『散華』 公演情報 なべげん太宰まつり『散華』」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 4.0
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  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    太宰治好きは必見。絶対観た方がいい。

    作家(桂憲一氏)がガールズバーのキャスト(木村慧さん)を誘って海辺で酒盛りをしている。鎌倉の小動(こゆるぎ)岬であろう。酒が切れ、女をコンビニに買い出しに行かせる。そして一人になると用意していた錠剤と酒を煽って昏倒。太宰治に傾倒していた売れない作家は七里ケ浜心中を模した自裁を選んだのだ。
    遠くで半鐘が鳴っている。靄がかったあやふやな景色。作家が目を覚ますと太宰治(大井靖彦氏)が横に立っている。時代は丁度七里ケ浜心中(1930年11月28日)のすぐ後、女給・田部あつみ(本名はシメ子)だけが亡くなった心中崩れ。絶望的に落ち込んでいる太宰治を励ます作家。「貴方は日本文学を背負って立つ人間なんだ、小説を書きなさい!」
    果たしてここは何処なのか?夢か現実か妄想か?

    MVPは太宰治役の大井靖彦氏、前回のヒトラーもそうだったが取り憑かれたように成り切る役者。
    太宰治文学論にもなっていて面白い。
    是非観に行って頂きたい。

    ネタバレBOX

    大変失礼な話だが、去年観た『雲を掴む』がつまらなかったので全く期待していなかった。本来なら今作も観なかったが何も考えずに3演目セット券を購入。まあ木村慧さん出ているし···、と思っていたらやられた。若い時分、太宰治や尾崎豊にベロンベロンにやられたチョロい自分。新潮文庫を貪り読んだもの。「微笑もて正義を為せ!」なんて今でも大好きだ。太宰治に受けた影響は終生付きまとう。独り深夜に憑かれたように読み耽り、誰にも理解されないお前の気持ちを判るのは世界で唯一俺だけだと囁く。この感覚を創れる奴のことをカリスマと呼ぶ。

    初日だったので皆さん台詞が怪しかった。これを覚えるのは大変だ。
    太宰治好きにはたまらない。だが余り知らない人にはそこまで刺さらないだろうとも思う。

    今作を叩き台に倍の二幕に分けて徹底的に太宰治論を突き詰めて欲しい。女との心中未遂という俗な太宰から彼の文学の本質へと。初心者の太宰治入門の切っ掛けになると思う。

    ユング派の分析心理学者、河合隼雄は太宰治の解説評論でお馴染み。太宰治の文学に流れる精神をキリストのようだと美しく賛美した。唯幻論の心理学者、岸田秀はそれを徹底的に論破否定。こういうキャラクターをこそ登場させて貰いたい。

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