ジゴクヘン 公演情報 ジゴクヘン」の観てきた!クチコミ一覧

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  • 4,500円…
    まずは、旗揚げ、おめでとうございます。
    劇場で配布されたパンフをみると、高知の高校演劇仲間だった岡林孝祥さんとヤマダケントさんが旗揚げされた劇団とのこと。
    『主宰でありながら、多くのことをまなびました。自分の未熟さをとことん思い知らされました。』…代表の岡林さんが初日三日前の朝記したことばだそうです。
    くれないは客席側の一観劇人にすぎないので、舞台を創るご苦労は経験したことがありませんが、皆さまの旗揚げに立ち会えたことは、うれしかったです。
    今回は、フリーカンパチケット制という、なかなか他の劇団が選択しない料金設定をされておられたことが、うかがう直接の理由になりました。
    誠に勝手ではございますが、私自身の御席料は4,500円と査定させていただきました。
    以下その理由について、長文になりますので、ネタばれ欄に記させていただきます。
    辛辣な書きぶりもしておりますが、有償でうかがった舞台はどんなご縁の方であれ、感じたままをおつたえしております。
    皆さまの船出を御祝いするとともに、これからのご発展をお祈り申し上げます。

    ネタバレBOX

    客席側から観ていても、劇団を旗揚げするのは容易ではないと思います。学生時代であっても、それは覚悟次第で、企業の立ち上げと同義になるでしょう。
    大阪のある劇団は学生時代に旗揚げして、三十年間健在ですし、もちろん各地にそうした劇団があります。
    しかし、客席側からみていると、そうした劇団の方々の運営方法に疑問を感じることも少なくありません。
    まず、人件費の考え方が企業人とまるで異なっているように思います。企業人は1時間でも人件費単価をかけてすべてコストとして計算します。
    どうも演劇の場合、稽古段階の時間も含めて、待機時間を度外視していることがほとんどのようにおみうけします。
    ふつう大人1人を1か月拘束したら、最低約二十万円~三十万円のコストを計上しないと、人件費はでません。
    個人単価に差こそあれ、スタッフを含めた総人数にその最低単価をかけた総額以上を売り上げねば、当然赤字興業になります。
    残酷なようですが、人件費も含めて、席料収入が経費をうわまわらない劇団の方々は、わたしからみれば、すべてプロではありません。プロとはそれで家族を養い生計をたてている職業人だと思っています。
    実は先日、ある劇団の方から『制作をやらないか』ともちかけられたことがあります。即刻お断りしました。
    どうも、『制作をやる…』ともちかけることが、その方にはわかっておられないようです。
    それはすなわち、今の勤め先を退社して、同じ給与をこれから将来ずっと保障されなければ、とうてい受けられるはずのないことです。
    企業人は、劇団の制作を片手間でできるほど、甘い世界には生きていません。とてもがっかりしました。劇団主宰とは、企業の責任者であり、経営者です。
    そんな感覚の経営では、とうていさきゆきはおぼつかないでしょうし。経営者ならば、負債が発生する前に、速やかに撤退しなければならないと思います。
    『演劇はそんなに席料があつまらない…』、『助成金がないとやってられない…』、本当にそうでしょうか。わたしはちがうと思います。
    よく演劇を税金で公的に支援するのがあたりまえのようなことをおっしゃる演劇人の方がいらっしゃいますが、賛成いたしかねます。
    演劇に限らず、興業の運営見通しは客席からの席料を算定基礎に経営すべきだと思います。結果的に公的な助成対象となったとしても、最初からその助成金がなければ興業がなりたたないのであれば、それは企業経営としては失格だと思います。演劇を職業として生きている方ならなおさらです。
    一客席人としての私の観劇数は平均よりは多いかもしれませんが、だからといって無原則に寛容なわけではありません。
    経営者としての年間運営試算でしっかりと黒字をだし、顧客に支持されて三十年、四十年と生きている劇団がどのくらいあるのでしょうか。
    社会保険料などはおいておいて、おおまかな試算なら社会人ならどなたでもすぐできるはずです。
    例えば、大卒直後から定年まで働いた方の生涯所得は個人差はあれ2億~3億円の間といわれています。40年間の個人総収入目標を2億円と仮定。年収は500万円。劇団が、主宰、作家(または演出家)、看板男性俳優、看板女性俳優、制作の5人のみ年俸制をとるとして、その合計は2500万円。客席料収入に対する粗利率50%として、必要な総客席料は年間5,000万円。興業回数を年間3作品、劇場サイズを客席300人と仮定。1作品「金土土日日月火(水休)木金金土土日」の13ステージとして、毎回満席で3900人、平均客席率9割で3510人。年間3公演で10530人。端数をとばして、年間有償集客数1万人。
    5000万円を1万人で割れば必要な席料単価は最低5,000円になります。すなわち、1回の席料に5000円払う有償客を興業期間中むらなく毎日9割以上集客する舞台の質を40年維持し、毎年のべ1万人以上客席をうめなければ、この条件、はたせないことになります。それでようやく、劇団で5人だけ、年間500万円の年俸が支払えますが、肝心な社会保険料が計算に入っていません。厚生年金は半額企業負担ですから、仮に演劇関係者の厚生年金基金がもしあったと仮定して(聞いたことありませんが)劇団を企業とした場合、この5人の将来の年金負担分まで保障しなければなりません。当然、ほかの俳優さんは今までどうり自分でチケットを手売りして出来高払いです。どうも小劇場演劇の席料は3000円前後が平均的なようにおみうけしますが、各劇団一体どういう計算で設定されているのか、企業人からすると疑問です。
    そもそもそんな単価で生活できるのでしょうか。「それ以上にすると客があつまらないから…」とおっしゃる方もおられます。
    ちがいます。わたしの知人でそうしたことをおっしゃる方は、同業者が客席の相当数を占めている、客席側が「雨の日の学園祭の模擬店状態」の劇団の方です。観るだけの観劇人は質が伴えば5千円はだします。
    実際それ以上の金額を投資してでも観にいっている方々は、私の知人にもたくさんいます。
    もちろん、舞台は生き方ですので、採算があわなくても、それでも舞台を創られるのは結構ですし、事実そうして数十年生きている劇団もあります。ただ、採算があわない場合は当然、主たる職業は俳優以外に維持しながら続けるしかありませんので、その主たる職業が本来のプロということになると思います。
    劇団四季、宝塚歌劇団、わらび座、NODA-MAP、SIS-CAMPANYなどの大劇場興業はこの際議論を混同しないよう除外するとして、「条件の悪い小劇場や野外劇でそんな劇団があるのか…」といぶかる方もいるかもしれません。あります。すくなくとも、私はひとつ、存じております。琵琶湖畔で『呼吸機械』という舞台を創られた劇団は、そうした劇団のひとつです。さきほどお話したように、参加者全員が俸給をうけているわけではもちろんないと思います。しかし、事実40年間作品の創作活動を継続され、劇団は生きています。
    だから、その劇団の客席には時とお金をおしまない、コアな純観劇人の方々が、距離をいとわず全国から集まります。交通費や宿泊料で合計数万円かけても、私はいきますし、ほかの方々もうかがいます。『呼吸機械』では500人の客席が満席で、私が伺った回は数人入りきれなかったと記憶しています。
    そうした観客層を維持できず、同業者どうしで客席をささえあっている劇団は残念ながら、やがて世の中に作品をおくりつづけることができなくなるのではないでしょうか。十年、二十年、三十年、おおむねこの区切りで解散なり、かたちをかえるなりされていると思います。
    コリッチに今日登録している団体は6939。この半年、平均一日3つずつ新着しています。そのうち仮に半数以上の3500団体が年3回公演しているとして、年間10500作品…小劇場興業の興業期間中の客席規模はおよそ数百人から1000人以上。低くみて平均500人お集まりになるとして、年間のべ525万人の有償純観劇人がいなければならないことになります。1興業で500人というのはおそらく参加者のもちだし確定の興業水準ではないでしょうか。週2で年間100作品かよっておられる方が1000人いても、10万席分…10000人いても100万席分。全然たりません。だからこそ、客席側の主役は、年1回から数回だけ、千円札をにぎりしめて通う、圧倒的多数の方々こそが主役なのだということがわかります。
    文化庁の現行制度そのものをここで全否定するつもりはありませんが、客が劇場にあつまってこそなんぼの世界ではないでしょうか。
    だから、劇場法をめぐる両論とも、私にはとても奇異にうつります。くれないは1回5000円でかまいません…うかがう舞台の質がそれにみあうなら。
    今回の旗揚げ公演の席料は、4500円を納めさせていただきました。理由は、私のなかでのこの演劇正規料金5000円にみあう舞台ではなかったからです。1割引かせていただきました。この500円の差にはとても大きな意味をこめています。
    それは、次拝見したときにその質に達しなければ、私はその後迷わず別の劇団の舞台を選択する…という意味でもあります。
    お金はかわりがきくことがありますが、時間はまったくかわりがききません。観劇人は、どちらかというと席料水準より、時間こそ重視している方が多いのではないでしょうか。
    いまの私にとって、ひとつの舞台をみにいくということは即、いくつかのほかの劇団が興業期間中みにいけなくなることと同義になっています。昨日千秋楽だった舞台も、観たいに記した作品のうち6つはうかがえませんでした。そして、今回はみなさんの千秋楽を選択いたしました。それは、この舞台の関係者の方から、直接お誘いをいただいた方がおひとりおられたからです。
    観劇は職業ではありませんし、演劇評論家などの職業にするつもりもまったくございません。仕事の合間に観劇予定をいれているのでどうしてもこうなってしまいます。くれないは、チケットプレゼントや観たい割引では伺わないことにしています。3000円以下では、皆さんに「今週下北沢で興業しているほかの劇団なみ」というまちがったメッセージが伝わるおそれがありました。舞台の質だけいえば、同じ明治大学出身の方々が2000円でもしびれる舞台を今週から来週にかけて上演されています。
    ちなみに、わたしの1日の食費は約1500円です。どんなに高い日でも2000円以内におさめています。2食のときもあれば3食のときもありますが、平均1食500円前後におさめるようにしています。3000円は2日分、4500円は3日分…もし私が文無しになって空腹になったとき、これまで観てきた舞台ひとつひとつの重みは、それだけの食事の重みと同じになってかえってくるでしょう。それでも、私は、琵琶湖で『呼吸機械』と出会えて、演劇と客席で出会えて、よかったと思っています。
    4500円は、「席料5000円で興業し続ける質を追究してほしい」というくれないの願いでもあります。
    これからの、みなさまのご発展を、お祈り申し上げております。

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