満足度★★
なぜジョン・シルバーなのか
開演前から役者たちが会場内にいて、入場してくる観客を迎えている。場内カウンターでは飲み物などを売っている。開演前にそういった雰囲気づくりをしているのは、別にいいと思うのだが役者が知り合いの観客と客席で雑談を始めてしまうのは、この劇団の関係者でもない人間にとっては違和感があった。
唐十郎の「ジョン・シルバー」をもとにしているが、台詞を割ったりしているためか、個々の役が立ってこなくて、ドラマとしての展開の面白さは少なかった。75分ほどの短い芝居で、歌も頻繁に入るわりには退屈した。なによりも唐の台詞を喋れるだけの肉体が圧倒的に不足していると感じた。男役を女にやらせるのもどうかと思った。唯一、小春役を演じた演出家でもある鈴木史朗だけが、猥雑な身体を持っているように思えた。音楽も同じような曲ばかりで、場を変化させるだけの高まりに欠けた。そして何よりも、今なぜ「ジョン・シルバー」なのかということが分からなかった。