満足度★★★★
大人になって見直すと
『にんじん』は中学1年生ころに小説を読んだことがある。小説と戯曲では主人公の年齢に違いがあり、小説は10-11歳、戯曲のほうは、16歳という設定。
私が学生時代は、松本典子さんという女優さんが当たり役で、その後、若かりし
頃の大竹しのぶさんが演じて話題になりました。
松本さんのにんじんはかなり昔に観ましたが、大竹さんのは観ていません。
小説を読んだ時は、実の親子なのに継子いじめのように息子に辛くあたる母親や無関心で冷淡な父親など、いまでいうところの児童虐待や育児放棄のような状態が理解できなくて、にんじんが可哀想でならなかった。
この年齢になって、改めて観ると、ルピック夫妻は離婚はしないが仮面夫婦状態にあり、結果的ににんじんが夫人の鬱屈した感情のはけ口になってしまうという、現代でもありうる話だと思った。
終演後のアフタートークによれば、演出担当の三木元太さんが、ご自身が母子家庭であり、『にんじん』の父子関係に興味を持ち、岸田國士がルナールに強く影響を受けていたことなどから、上演を提案したとのこと。
劇団のご厚意で、作品にちなんだにんじんスープが観客に配布され、アットホームな雰囲気で、久々に実のあるアフタートークを聴いた思いです。