ズベズダ 公演情報 ズベズダ」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 3.9
1-8件 / 8件中
  • 実演鑑賞

    2021年の青年座上演作(180分)を、作家自身の劇団で大幅にパワーアップして120分✕三部作として上演。3月2日までザ・ポケット。

    https://kawahira.cocolog-nifty.com/fringe/2025/03/post-4955c3.html

  • 実演鑑賞

    満足度★★★

    この{ズべズダ」は青年座公演で21年に見ている、素材は二次大戦のナチの技術者争奪戦の米ソ秘話がその後の両国の宇宙開発に現在にまでも影を落としていくハナシだ。思わず耳をそばだてるような秘話に巧み盛るのは上手い野木萌葱が青年座に書いた本で、よく知らない世界と言うこともあって面白かった。今回は全体をさらに詳しく全編三部にして一挙上演と言う。全6時間半と聞いて、長くなったのなら後半だろうと当てをつけて第三部を見た。今回は作者自身の劇団パラドックス定数に小劇場ではよく見る俳優を集めての公演である。
    これがかなり当てが外れた。
    青年座版の内容は今回では一部、二部になっているらしく、第三部のパラドックス版はアメリカが月面到着に成功した後の取り残されたソ連科学者の内部抗争が軸になっている。従って、第一部で特に面白かった、米ソという異国にいわば拉致されたドイツ科学者たちとソ連の科学者との、科学の発展と成果をかけた米ソ対立、と言うこのストーリーの面白く、おいしいクライマックスは、はじまってすぐ、慌ただしく決着が付いて、第三部の中身はほとんどがその後の後始末になっていて、すっぱり落ちていて意気あがらない。ソ連が負けたのは社会体制にも原因はあるわけで、先の青年座版では当時我々にもおなじみだった米ソのリーダーたちも少しは登場してハナシが面白くなったのにそこもない(ワンシーンだけフルシチョフが出てくる)。次第に追い詰められていくソビエトと、その先端を任された科学者たちの苦悩は、ソビエト型国家予算の取り合いでしか描けないから、小国になった我が国の予算審議のようなチマチマしたよくあるハナシになってしまう。青年座版にあった米ソの情報合戦も科学的成果も勝負が一方的に付いてしまった後では発展させようもない。また、いいネタでもあるドイツ拉致科学者が三部では全く描かれなかった。
    出演者たちの背景も役柄もはっきり設定されていなくて、ドラマのシーンとしては物足りない。つまり、アメリカにスパイに出かけるというのと、喰うためにNASAに転職するというのでは分けが違う。
    青年座版では宇宙を思わせる抽象舞台で何もかも会話で処理していて、それが上手くいった。テキパキした出し入れもロケット発射も、照明も音響も頑張って効果を上げていた。3時間ほどある長尺だったが飽きずに見られた。三部では、アメリカの月到着のシーンがあるのに、そこへ至るまでの経過もふくめかなり速いスピードで事実報告のような進行になっていて、そこも疑問だ。そこのソ連側への衝撃が上手く描かれていないと、後が持たない。
    三部のパラドックス版は(1,2部は見ていないから分からないが)そこもかなり不利だったとおもう。作者はこの話はどうしてもかきたかったと劇場パンフでは熱弁を振るっているので、是非改訂版を頑張って、もう少し大きい劇場でせめて、トラムや、あうるすぽっと(天井の高い小屋)でやって欲しいものだ。また、科学をドラマに中で大きな比重を置くのはこの作者の魅力だが、そこも今回は薄味で残念だった。総体でいうと、この第三部は折角の異色の企画のしめどころなのに、青年座が俳優も演出もでがたくまとめる方向で成功したのに比べると、作者、演出両立で時間もまとめる時間も足りなかったのではないかと思う。

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    鑑賞日2025/02/27 (木) 14:00

    三部作全て観劇しました。ソビエト連邦からみたロケット・宇宙開発。第一部は黎明期から成長期、第二部は絶頂期、第三部は衰退期。国家の思惑に翻弄されながらアメリカNASAに立ち向かうソ連の科学者達の純粋な魂。月の石持ち帰り計画の失敗直後アメリカの月面着陸成功を祈る心に科学者の矜持を感じる。科学者・政治家達の活気がある第二部がもっとも迫力があり面白かった。

  • 実演鑑賞

    満足度★★★

    第三部 1964〜2025

    今三部作のテーマは唯一つ。SF小説の始祖、ジュール・ヴェルヌの言葉。「人間が想像できることは、人間が必ず実現できる」。想像できるということは実現可能ということ。その糸口を探せ。
    コロリョフは人類史上初となる月探査衛星に「メチタ(夢)」と名付けた。最後まで夢見る男。

    松本寛子さんがいい味。
    是非観に行って頂きたい。

    ネタバレBOX

    1964年10月14日、ニキータ・フルシチョフはクーデター同然に失脚。レオニード・ブレジネフが書記長の座に就いた。ブレジネフは宇宙開発にそこまで力を注ごうとはしなかった。

    1966年1月14日、コロリョフの突然の死。ヴァシーリー・ミシンが後を継ぐ。
    1967年4月23日、ソユーズ(連合)1号を打ち上げるも初の死亡事故に。以後、打ち上げ失敗と死亡事故が続きNASAに差をつけられていく。
    1969年7月20日、アポロ11号が有人月面着陸に成功。
    1970年10月31日、ソ連は月接近飛行計画を中止。
    1974年6月23日、ソ連は有人月面着陸計画を中止。

    チェルノブイリ事故、ソ連崩壊、ウクライナ侵攻と現在までのソ連、ロシアの歴史が描かれる。ソ連崩壊で祖国での宇宙開発を諦めた前園あかりさんはアメリカに道を求める。岡本篤氏と松本寛子さんは結婚し、イワン・イワノヴィッチ人形と3人で暮らす。時々TVで見かける自分達の青春が詰まった数々の宇宙船。そしてプーチンのウクライナ侵攻に老いた岡本篤氏は反戦デモに参加しようとする。必死で止める松本寛子さん。「私を独りにしないで!」
    戦争で使われているロケット(ミサイル)には自分達が必死で開発した技術が使われている。こんなことの為に研究した訳では決してない。宙へ!宙へ!宙へ!ロケットが飛ぶべき方向は果てしなき宇宙なのだ!

    自分的には2021年の青年座版の方が好き。円周状の通路をぐるぐるぐるぐる歩き廻りながら激論を飛ばす横堀悦夫氏が最高だった。今回はディレクターズ・カット最長版の趣き。見事なソ連史になっている。当時を知るロシア人に感想を聞いてみたい。
  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    第二部 1957〜1964

    1958年7月29日、ソ連への技術の遅れを挽回する為にアイゼンハワー大統領はNASA(アメリカ航空宇宙局)を発足させ、猛然と追い上げを図る。
    今作こそこの三部作の魅力の要。セルゲイ・コロリョフと姿を見せぬヴェルナー・フォン・ブラウンのソ米対決こそが肝。メチャクチャ面白い。「お前ならどうする?」
    必見。

    ネタバレBOX

    1957年11月3日、スプートニク2号。「次は生物を宇宙空間に送ろう」との考えで選ばれた雌犬ライカ。打ち上げから6時間後には死んでしまったが、その事実は隠蔽された。世話をしていた岡本篤氏の苦しみ。イワン・イワノヴィッチ(イワンの息子)と名付けられた実験用等身大人形を可愛がる。1961年4月12日、ヴォストーク(東)1号でユーリイ・ガガーリン(鍛治本大樹氏)が世界初の有人宇宙飛行に成功。世界中に名前を轟かす。

    恐怖政治の独裁者スターリンが死去し、後継者フルシチョフはスターリン時代を否定した。国際連合総会で平和共存を訴え、訪米、訪中。華々しい世界平和への友好ムードは長くは続かない。フルシチョフは海外を訪問する度にロケットを打ち上げ、ソ連のICBM(大陸間弾道ミサイル)の脅威を印象付けた。1959年、キューバ革命によりアメリカの傀儡政権を打倒したキューバが社会主義国を宣言。アメリカのすぐ150km南の島国。1961年、ベルリンの壁の構築。1962年、キューバの要請によりソ連が核ミサイル基地の建設開始。ケネディ大統領は海上封鎖によってソ連の輸送船の航行を阻もうとした。いよいよ核戦争が始まるのか?「キューバ危機」に世界は固唾を呑む。

    1963年6月16日ヴォストーク6号でワレンチナ・テレシコワが女性として初めて宇宙飛行をした。
  • 実演鑑賞

    満足度★★★

    第一部 1947〜1957

    第二次世界大戦の終結が見え始めた頃、連合国のアメリカとソビエト連邦はその後の世界情勢を見据える。この二つの大国の覇権争いになると。敗戦間近のナチス・ドイツは科学技術力が圧倒的に優れていた。この技術を自国のものとすべき、決して奴等に渡してはならない。
    1944年に世界初の弾道ミサイルを開発した天才、ヴェルナー・フォン・ブラウンはアメリカにスタッフ数百人と亡命する。
    一方、ソ連は研究者を家族込みで2万人拉致。ゼーリガー湖のゴロドムリャ島に監禁、その技術を徹底的に吐き出させた。

    主演のセルゲイ・コロリョフ役植村宏司氏が第一声から声が枯れていた。三部縦断上演、大丈夫なのか?と不安が走る。だが何とか持ち直し最後には気にならなくなる。物凄い台詞の量、化け物に見えた。短髪の亜麻色の髪、遠目だと魔裟斗っぽい。少年時代からの空への夢、グライダー、航空機、更に宙へと。宇宙にまで人間は飛んで行ける。あらゆる困難を乗り越え、コロリョフは敵国に向けたロケット(ミサイル)の目的地を月面へと変えていった。国威発揚の名のもとに。

    第一部のもう一人の主人公、アルベルト・レーザ(大柿友哉〈ゆうや〉氏)。後にソ連に帰化したナチス・ドイツの工学者。戦争協力なんかの為ではなく、セルゲイ・コロリョフの夢に賭けた。月に人は立つのだ。それは決して不可能なことではない。人間の叡智は更に進化していく。必ず成し遂げる。限りなく頭脳をフル回転させてそこにまで辿り着く。人間は生きながら進化できる稀有な生物だ。必ず行くのだ。

    コロリョフと複雑な関係にあるエンジン設計士ヴァレンティン・グルシュコ(神農〈かみの〉直隆氏)、ロケットエンジン開発の要。1933年ジェット研究所で出会ったコロリョフとグルシュコは互いの才能を認め合った。だがスターリンの大粛清が始まり、密告が奨励される世の中に。1938年、グルシュコは反体制派の嫌疑で投獄、禁錮8年の刑。苦境に立たされた彼は司法取引に騙され、無実の同僚コロリョフを反体制派として告発してしまう。冤罪のコロリョフはシベリアの強制収容所コリマ金鉱山に送られ10年の刑。栄養失調からの壊血病で全ての歯が抜け落ち心臓病を患う。この地に送られて死んだ者は100万人を超えた。コロリョフの罪が免除されたのは1944年。後に自分を陥れた者がグルシュコであることを知る。当時の政治情勢として仕方ない事とはいえ、ずっと心の底に残るわだかまり。互いの能力を認めつつ、複雑な感情の人間関係は一生続いた。

    岡本篤氏、前園あかりさん、松本寛子さん、3人組のキャラ立てが巧い。少ない人数で大河ドラマを綴るにはキャラとエピソードの凝縮と選別が要。

    MVPはフルシチョフ第一書記役の今里真氏と国防工業大臣ドミトリー・ウスチノフ役の谷仲恵輔氏。JACROWを観ているような手慣れた手腕の政治劇。この二人のハイテンションで客席がパッと明るくなる。成田三樹夫や小池朝雄、遠藤辰雄の風格。出て来るだけで盛り上がる。

    驚くのはこんなガチガチの理系話に詰め掛けた女性客の多さ。野木萌葱さんの信望か?
    是非観に行って頂きたい。

    ネタバレBOX

    劇中には登場しない二人の天才。

    ヴェルナー・フォン・ブラウン。ナチス・ドイツのV2ロケットを開発し英国中を恐怖に陥れた。最大射程距離は320km、マッハ4で飛ぶ1tの爆薬を積んだミサイル。アメリカに亡命後は宇宙開発の責任者となり、「米宇宙開発の父」と呼ばれる。アポロ計画を立ち上げ、有人月面着陸を成功させた。

    コンスタンチン・ツィオルコフスキー。19世紀のロシア帝国で「ツィオルコフスキーの公式」を発表し、ロケットで宇宙に行くことが可能であることを証明した。「宇宙旅行の父」と呼ばれセルゲイ・コロリョフに多大な影響を及ぼす。世界初の人工衛星「スプートニク(付随するもの)1号」はツィオルコフスキー生誕100年に合わせて打ち上げられた。

    多分、アルベルト・レーザは複数の人間を組み合わせた架空のキャラクターだろう。ルカーシャ、サーシャ、レーリャも多分そうではないか。

    マニアックな米ソ宇宙開発競争を叙事的に綴る。ディレクターズ・カット最長版の趣き。
    話自体は暗く淡々としていて余り盛り上がらない。来たる“物語”への「序章」として静けさを積み上げていく。

    1957年10月4日、ソ連は世界初の人工衛星「スプートニク1号」の打ち上げに成功。0.3秒ごとに発信される信号音は世界中で受信され「スプートニク・ショック」と呼ばれた。世界で最も優れた国家はソビエト連邦であることの宣言。休憩中もずっと鳴り続けるシグナルの余韻。
  • 実演鑑賞

    満足度★★★★★

    鑑賞日2025/02/24 (月) 13:00

    縦断観劇。
    芝居の展開が早い演出が宇宙開発のペースに合っていて小気味良かった。
    時代のイベントとして認識している出来事を当時にリアルタイムに生きた擬似体験として感じる事が出来た。

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★★

    縦断上演を鑑賞。青年座版の2倍の長尺ということもあり、ストーリー展開のディティールがより詳しく描かれているし、主人公コロリョフの死後の話も、ほぼ現在に至るまでずいぶん入れられている。専門的な事柄や歴史についてよく調べられそこから緻密に創作が組み立てられた驚異的な台本だ。また、青年座版では演出ゆえかカラッとした明るさがあったように記憶しているが、本上演はパラドックス定数らしい基本的にシリアスな雰囲気(いくつか笑いをとる場面があるとしても)で照明を落とした暗めの場面も多用されていた。段差が付けられた簡素な舞台を巧く利用した演出はなかなか優れている。それにしても、難しい専門用語や発音しにくいロシア人の名前が散りばめられた大量のセリフを6時間も駆使し続けた俳優たちは絶賛に値する。

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