地上最後の冗談 公演情報 地上最後の冗談」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 3.0
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  • 実演鑑賞

    満足度★★★

    韓国演劇界、注目の喜劇作家オ・セヒョク。みょんふぁさん一推しで今作の翻訳も担当。ブラックな笑いを売りにしているらしい。舞台は捕虜収容所。台詞は関西弁、九州弁を多用してニュアンスが日本人にもよく伝わってくる。駄洒落などかなりテキレジしているのだろう。
    順に処刑される事が決まっている捕虜達は死の恐怖に怯えている。端の部屋の五人は足音と銃声のサイクルから、自分達が殺される迄の時間を想定する。

    効果音と演奏を担う藤崎卓也氏が下手に座る。ブリキ缶のようなカホンに跨りパーカッションとしてリズムを刻む。口笛。赤い太いホースを吹いて銃声に。鏧(きん)を叩く。棒ざさらの音。

    捕虜収容所の端の部屋の五人。
    佐藤B作氏は次長課長河本の「おめえに食わせるタンメンはねぇ!」の声質に似た作り声が漫画チックでよく通る。この中で一番目上だと威張っている老兵。
    長橋遼也氏はフジモンみたいで心根があったかい奴。
    清田智彦氏は笑いのセンスが残念ながら兎に角ない奴。
    佐藤銀平氏は熱血漢。
    宮地大介氏はコミカルなリアクション。

    逃れられない死が間違いなく順番に訪れる。とても受け入れ難い恐怖。更にそこに予期せぬ新入りが放り込まれる。しかも少年兵。年端もいかぬ子供を徴兵し戦地に送り込む国家の非道さ。もう銃殺まで数十分しかないのだ。

    少年兵は宏菜さん。やっぱ凄い天性の勘。甲高い笑い声が「ケケケケケ」と飛び出て皆ゾッとする。
    有馬自由氏は敵兵、銃殺の執行役。香港功夫映画に出てきそうなユーモラスなヒールできっちり決めてみせる。

    上質な役者陣の醸し出す緊張感。超満員の観客が押し寄せた。佐藤B作氏の集客力か?生と死の極限状況で人間が出来ることとは?サルトルの『壁』のフリー・ジャズ。
    是非観に行って頂きたい。
    この豪華全キャストのサイン入りポスターが何と1000円!!

    ネタバレBOX

    済州島(チェジュド)四・三事件という内戦がモデルだそうだ。韓国の南にある火山島、済州島。1948年アメリカ支配下の韓国で共産主義的な思想を持つと見做された島民への大虐殺が行われる。3万人以上が殺され、島にある村の7割が焼き尽くされた。

    中盤、宏菜さんの髪が帽子から全部出てしまい、「実は女だったのか!」となるのかと思ったら皆無視。何事もなかったように進行。ミスなのかと思ったらクライマックス、自ら帽子を叩き付けるシーンもある。演出の技の一つなのだろう。

    佐藤銀平氏VS宮地大介氏の小噺合戦位から停滞感。やっぱ笑いの狙いがちょっと違う。笑いには厳しくあって欲しい。

    宏菜さんVS佐藤B作氏も見もの。ラストの佐藤B作氏の長い独白はシェイクスピア劇みたいだった。

    死とは何なのか?ある種の救いなのか?“死”を許すことか?

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