穢れ知らず 公演情報 穢れ知らず」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 3.4
1-6件 / 6件中
  • ソワレ観劇。
    下山さんの引退公演だったそうです。

  • 満足度★★★★★

    穢れてしまった女神と弟に訪れた悲劇
    会場、木造の客席は古き良き日本家屋を連想させる。

    客席と舞台上の距離はゼロである。
    テレビ・モニターや銀幕の向こう側の世界の話ではない。
    自分が存在する空間と同じくしている。

    空間ゼリーの舞台と私の間の距離はゼロである。
    私の距離感がゼロになる。
    私は、まるで底なし沼に引き寄せられるかのように、物語にのめり込んでいく。

    後日談として、下山夏子さんの引退公演であることを知りました。とてもショックを受けました。
    しかしこれで終わりというわけではない。終わりは次への始まりでもあります。
    次のステージが終わったら、また空間ゼリーに戻ってきてほしいものです。
    彼女の今後のご活躍、ご健勝を祈ります。

    次回の春公演である『私、わからぬ』も必ず観に行きます。

    本公演『穢れ知らず』に興味を持たれた皆様は、近日発売予定DVDを
    劇団のホームページにてご予約して、ご覧になって下さい。
    過去の公演DVDもぜひご一緒にご購入を強くおすすめします。

    ネタバレBOX

    『穢れ知らず』のスジ、ストーリーの要約

    この物語は悲劇である。

    ここは都会から遠く離れた、山に囲まれた小さな村。
    まるで昭和を想い起こさせるような、のどかな村である。
    しかしこの村の人々は、恋愛、浮気、嫉妬や噂話にとても敏感である。
    小さな工場を経営している一家の物語である。
    (台詞の方言で語尾に「~じゃけん」と口にしていたので、広島あたりの山陽地方と思われる)

    この家では古くから、狐が人間に取り憑くと伝承される。
    家の離れに狐が多く現れる。特に狐の鳴き声がうるさいと大人たちは皮肉めいて言う。
    (狐とは女性のことで、鳴き声はあえぎ声と連想できる)

    古くから伝わる『鶴の恩返し』『鶴女房』の物語が登場する。
    機を織る神聖な儀式。
    鶴は機を織り、その織物を商売にし、財を旦那にもたらす。
    鶴は神様である。
    しかしながら鶴は獣(ケモノ)である。
    獣は穢れている。

    姉のことが大好きだった弟
    血のつながっているが故に「決して結ばれることのない二人の純愛」の悲劇が始まる。

    姉は6年前、この家族の問題がいやになり、東京に出て行ってしまった。
    6年が経って、姉が突然東京から帰ってきた。
    いや、東京からも逃げ帰ってきたのだ。
    姉にはもう、帰る場所はこの家しかない。

    嫉妬の女郎蜘蛛たちが、張り巡らせた情報収集の蜘蛛の巣。
    インターネットのWWW(ワールド・ワイド・ウェブ)は、その名の通り、地球規模の蜘蛛の巣である。
    この網によって嫉妬の蜘蛛たちは、姉が秘密にしてきたこと、穢れていることを知ってしまった。

    姉の秘密とは「アダルトビデオに出演している女優であり、体を売っていること」である。
    奇しくも、まるで機を織る鶴のようである。
    鶴は自身の体を切り刻み、織物を作り、売り物にした。
    女は自身の体を男たちに捧げ、売り物にした。

    女蜘蛛たちは、自分達の求愛に何の興味を示さない弟に対する切り札を手にした。

    一家が経営する工場の経営状態は、自転車操業、火の車であった。
    一家が破綻する危機をなんとかしようと、姉が金を工面すると皆に言う。

    女蜘蛛たちは、ここぞとばかりに、この姉の秘密を弟にばらしてしまう。

    弟は姉がいつまでも綺麗で純粋な穢れのない女神であると信じていた。
    しかし、姉はただの女であり、獣(ケダモノ)であるという事実を突きつけられてしまった。
    弟は姉に、気にしていないから忘れるからとなだめ、俺が守ると決意する。

    ここで、この物語のキーワードである『言えば知る、知れば忘れぬ』が登場する。
    姉は弟にこう告げる。

    『言えば知る、知れば忘れぬ』

    世の中には「取り返しのつかない事」が存在する。
    この物語のテーマの一つである「見てはいけないものを見てしまったとき必然的に訪れる別れ」がやってくる。
    弟の両腕が、白い肌で妖艶な姉の首筋に触れる。
    弟が自らの手によって、穢れてしまった姉を殺める。
    姉と弟は永遠の別れを迎える。

    この物語は悲劇である。


    【物語の魅力に引き寄せられる細かな設定】

    この一家に関係する人物相関図が複雑である。
    ドロドロの愛憎劇が繰り広げられる。

    姉と弟は血のつながった家族である。二人は愛し合えども。叶わうことのできない愛である。

    昔、叔父が母に浮気をした。この二人の間に生まれてしまったのが、弟である佐伯五樹である。
    そして今から6年前、家の離れで、母が他の男とセックスをしていた。
    弟、佐伯五樹は母に男ができていることに気付いていた。しかし、見て見ぬふりをした。
    姉は、幼い妹が泣き止まない為、母親の元へ行ってしまった。

    母は娘に淫行を見られてしまった。
    母はもうここにはいられないと、男と一緒に村から出て行き、蒸発してしまう。

    帰らぬ母親、村中にこの話が広まる。

    ・叔母と母は姉妹。

    ・叔父(夫)が蒸発した母に寝取られたことを今でも嫉妬する叔母。ノイローゼになっている。

    一人残された父親は、軽蔑され、工場経営もままならず、3年後に他界する。
    この出来事は物語現在から数えて3年前の話である。
    東京に出て行ってしまった姉は、父の葬式には現れなかった。

    ・突然帰ってきた姉を、蒸発した母に想い重ねる叔父。

    ・近所の男の子、遠野 栄吉と妹たちの間の三角関係。
     栄吉は三女が好き。
     四女は栄吉に惚れていて、周囲の大人たちも結婚の期待を寄せる。
     三女は栄吉が好きであることを、四女が惚れているため、公に言えない。
     栄吉は四女よりも三女のことを愛している。

    ・工場の女従事者が叔父に接近し、家の中にずかずかと入り込むのを警戒する妹(次女)。
    ・工場の金を持ち逃げし、叔父と逃避行する工場の女従事者
  • 満足度★★★★

    炭が熾り、燃え崩れるような・・・
    台本がとても緻密で、しかも役者の表現に力みがなく、すっと伝わってくる感じの舞台でした。構造的にはやや複雑な部分もあるのですが、順番にカードが開いていくような展開なのでその複雑さが次のシーンへの興味につながり、ますます引き込まれてしまったような気がします。

    求心力豊かな、出色の舞台だと感じました。



    ネタバレBOX

    会場に寄り添うような物語、熾った炭がさらに回りの炭を熾らせていくような展開に、一気に引き寄せられてしまいました。

    それぞれの出来事にちゃんと必然性の裏打ちがあるのが見事で・・・。

    ある意味日本では珍しい悲劇の要件をきちんと満たした作品かもしれません。
  • 満足度★★

    少し分かり難い感じがしました
    色んな伏線が用意されているが、あまりうまく活用されているとは思えず、個人的には少し分かり難いように思えた。

    劇団HPを見ると、女性の視点から見た女性の演劇、ということを標榜しているようだが、本公演の女性キャストも全員ビジュアルが良く、とても華やかな雰囲気。

    取り上げているテーマ、ストーリとも少々重苦しく、折角の劇団の個性、強みを、うまく活かしきれてないように思った。

  • 満足度★★

    核となるべき話の輪郭が弱い
    故郷を捨てるように上京した旧家の長女が6年ぶりに戻ってきたことで狂い出すいくつもの歯車。そして生じる愛憎劇。103分。

    ネタバレBOX

    登場人物が多すぎ、それぞれが何を隠したくて、何を守りたくて、何を求めているのかの提示がはっきりしないため、各キャラの見かけの嫌悪感ばかり見せつけられる。客席に張りつめた空気は舞台の緊張感が伝えているものではないのを理解してほしい。

    民話をもとに、ということだが、民話との繋がり方が希薄だったり、うまくなぞっているとも思えなかったのは残念。

    それと、消えものは出すのであれば、そのシーン自体も大事にしてほしいし、きれいに消費してほしいなぁ。3回とも残り方や片付け方が気になった上に必要さを感じなかった。

    いくら田舎の自宅兼工場(製糸?)とはいえ、今に手持ち金庫設置はあるまい。セット自体はザムザの雰囲気に合っていたが細かい部分の配慮も必要かと。
  • 満足度★★★★

    どろどろだ!
    私の前の席で観ていたお客さんが「ここまでどろどろなんだね…」と言ってました。
    私も観てて、どろどろしてるなぁ、と思いましたが、なにか破滅へと向かう足音が少しづつ忍び寄って来る感じでハラハラしました。
    初演は観たことがないのですが、凄味のある芝居でした。

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