満足度★★★★★
戦慄するほどの素晴らしさ
まず、とにかく主演のお二人の演技が素晴らしい。
ピーター役の森周、ジェリー役の浅倉歩、それぞれが、演技のうまい下手、なんてのを超越して、役柄をしっかりとらえ、自分のものにしていた。
特にジェリーは、役柄をじぶんのものにした、という観点において完璧だった、と感じさせた。速射砲のごとくに続く長ゼリフを、一瞬のゆるみもなくカラダで演じ、観るものを惹きこんだと思う。
そもそもの、この戯曲、名作と言われる割には、日本人には難しい作品だと、私は思っている。
元来は、一幕物の二人芝居だが、今回、演出の林田こずえは、イリュージョンの部分を、数人の黒子を登場させている。
開幕前、私は「ははあ、二人の演技だけではもたないかもしれない、というので黒子を出すことにしたのか」と、失礼な邪推をしたのだが、始まってみたら、とんでもない。
黒子がいなくても、二人だけで充分に素晴らしい作品になっただろう。
では、黒子は不要だったか、というと、決してそんなことはなく、視覚的に増幅させる工夫が素晴らしかった。
以下、ネタばれ一言。