満足度★★★★
コンテンポラリー傑作集
韓国のバレエ団、ユニバーサル・バレエによるコンテンポラリー作品だけを集めたチャレンジングなプログラミングの公演で、ユーモラスなものから、クールなものまで様々なタイプの作品があって楽しめました。
『Petite Mort』(イリ・キリアン)
モーツァルトのピアノ協奏曲の緩徐楽章2曲に乗せて官能性を感じさせながら優美に踊る作品でした。男性はフェンシングのサーベル、女性はドレスを模したキャスター付きのオブジェを用いて男女の性を象徴的に描いていて、静かな雰囲気の中に深い情感が感じられました。
大きな布を舞台奥から手前に広げ、また舞台奥に持って行く間に行われる転換が美しかったです。
『SECHS TANZE』(イリ・キリアン)
同じくモーツァルトの『6つの舞曲』を用い、顔を白塗りにした3人ずつの男女が人間関係をコミカルに描いた作品でした。音の動きに合わせて細かく動いたり、体を上下に動かしたりと、故意にベタな当て振りをしているのが皮肉的で楽しかったです。
笑いの中にうっすらと悲しみが感じられるのがモーツァルト的でした。
『In the Middle, Somewhat Elevated』(ウィリアム・フォーサイス)
パリオペラ座バレエ団のために作られ、多くのバレエ団で上演されている名作で、クラシックバレエのテクニックを用いながら、全く新しい動きになっていて、初演から20年以上経っているのにも関わらず、斬新さが損なわれていませんでした。
爆音のインダストリアル音楽の中で複雑にフォーメーションを変化させつつクールに踊る様子がとても格好良かったです。
『MINUS 7』(オハッド・ナハリン)
バレエのテクニックがあまり使われない、むしろダンス系の作品で、始まる前の休憩時間中からずっと脱力的なソロダンスがあったり、客席に降りてきて客を舞台上に連れて行き一緒に踊ったりと破天荒な構成が楽しい作品でした。
椅子に座ってのユニゾンの群舞が何度も反復され、次第に服や靴を脱いで行く中、一人だけが服を着たまま他と違う動きをし続けるシークエンスで次第に楽しさが怖さに変容して行くのが素晴らしかったです。
ダンスのレベルとしてはソロにおけるキレの不足や、アンサンブルのタイミングやポーズの不一致が目立ち、一番バレエ的でないナハリン作品が一番良かったのはバレエ団としてはどうかとも思いましたが、海外公演にこのような意欲的なプログラムを組む姿勢は素晴らしいと思います。今後も名作古典以外の演目を携えて来日して欲しいです。