十二月、田中、がんばれ! 公演情報 十二月、田中、がんばれ!」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 4.0
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  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    🔞 R-18朗読劇ということに興味を持って観たが、思っていた以上に面白かった。典型的な娯楽作。発想はエロいが、内容は極めてまっとうで惹き込まれてしまう。この劇団の特長であろうか、マンガを読むような感覚で 分かり易い演出が好い。その資料-両面35頁(非売品)を配布、笑ってしまうが なかなかの力作。衣裳は男女ともに白シャツに黒ズボンで、外見で惑わせることなく朗読力で聴かせるといった矜持を感じる。それだけに 冒頭は正確に読むことを優先し(心掛け)たかのような棒読みが惜しい。
    この朗読劇、上野小劇場という比較的小さい空間だから面白味が感じられると思う。今後、別の劇場 どのような公演を行うのか。

    27歳の中学校体育教師 田中純平が、なんとか今年のクリスマスに童貞を卒業したいと…。登場するのは純平をはじめ賢者・性欲・睡眠欲・食欲そして先走り宣教師、人間の三大欲を顕に悶々とした姿が滑稽に描かれる。
    童貞を捧げたいのが同僚の社会科教師 岸野つかさ 29歳。口説くどころか まだ交際もしていない。クリスマスまであと一か月、岸野先生と懇ろになるための脳内シュミレーションが先走る。ちなみに説明にあるクリスマスアダムとは、早い段階で明らかになるが、先走り宣教師はラストにその真の姿が明らかになる。

    少しネタバレするが、岸野先生を巡って同僚の音楽教師 中山金太郎(32歳童貞)という恋敵が登場する。そして中山先生や女子生徒との保健体育(避妊具の使用)に係る会話も興味深い。
    シンプルな舞台美術と照明だが、朗読劇としては十分に その効果を発揮していた。
    (上演時間1時間45分 休憩なし) 

    ネタバレBOX

    舞台美術は中央に階段、上った先にスクリーンが吊るされている。両脇は暗幕 そこが出ハケ口になっている。上演前は階段下に半裸のキューピー人形のようなものが置かれているだけ。照明はシンプルな暖色やショッキングな場面は朱色、いずれにしても単色の色彩。時々 スクリーンを上げ、その奥から階段を下りてくるといった観せ方もする。

    物語はクリスマスに童貞を卒業したい純平 27歳の悶々たる物語。童貞を捧げたい女性にアプローチする過程を、人間の三大欲を擬人化し滑稽に描く。基本は朗読劇だが、スクリーンにラフスケッチのような絵を映し出す。漫画の吹き出しの代わりに言葉(台詞)を朗読で紡いでいく。冒頭、賢者と性欲の会話は少し緊張気味で棒読みのような印象だが、だんだんと感情が入ってくる。1人複数役を担っているため、話し方や声色等を変えるなど 工夫をしている。

    メインは童貞卒業ではなく、それに向けての面白可笑しい行為(過程)だけに、純平の妄想が爆発するような感覚。純平という一人の男の中にある考え 感情などを賢者・性欲・食欲・睡眠欲といった4人が分担し、協力や対立をしながら童貞男を立派に立ち上げる。スクリーンに映し出される絵が情況などを表し、そこに台詞が加わるから実に分かり易い。

    さて男女の交わり、その起源を遡るとアダムとイヴ。そして童貞卒業をクリスマスに定めているが、遅くともその翌日 クリスマス アダムという予備日までターゲットに加えた。自分の中で、理性的に分析し判断する人格らしきものがいる。それが先走り宣教師、欲望を制御したり発散させたり、それこそが田中純平という人間性(本性)を表している。
    ちなみに分厚い資料は、スクリーンに映し出したラフスケッチ全画面である。
    次回公演も楽しみにしております。

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