戦争とは…『被爆樹巡礼』『犬やねこが消えた』 公演情報 戦争とは…『被爆樹巡礼』『犬やねこが消えた』」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 3.0
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  • 実演鑑賞

    満足度★★★

    ①「犬やねこが消えた」
    犬役の髙宮千尋さんに妙な既視感を感じていたが、元AKB田野優花似が理由だったことにやっと気付く。方南ぐみの『青空』も同じ話だった。昭和19年、「犬原皮増産確保並狂犬病根絶対策要綱」が全国に通達され、軍需用皮革製品の為に飼い犬や飼い猫を供出させられることとなる。家族のように可愛がっていた犬や猫が“御国の為に”屠殺されなければならない。その時の張り裂けた心は一生ついて回り、何十年経って老いた今日も自らを苦しめ続ける。悔恨、無力感、理不尽への怒り。国を責め己を責める。何故あんなか弱き者達が殺されなければならなかったのか?あの時の怯えた目、助けを求める声、最期のあの鳴き声が耳にこびり付いて離れない。自分は人間よりも犬猫の方に感情移入するタイプなので彼等の気持ちは他人事ではない。危急時この世の常として弱い立場のものに皺寄せが来る。そんな世界は滅ぼしてしまえ。昨日今日生まれた子猫の為にこそ世界は存在する。その為だけの世界だ。

    オープニング、中村たつさん(96歳!)によって茨木のり子の「わたしが一番きれいだったとき」が朗読される。理不尽な人生への復讐の為、自殺ではなく長生きすることを選んだ詩。兎に角生きてやる。生きて生きて生き続けてやる。生き続けることこそが復讐だ。皮肉の効いた「倚りかからず」も。
    岩崎加根子さん(91歳!)と阿部百合子さん(91歳!)、遠藤剛氏も健在だ。
    ピアノを伴奏しエンヤのようにハミングで歌う石塚まみさんが素晴らしい。作曲も兼ねている。

    作家の井上こみち(椎名慧都さん)が犬の散歩をしている松本潤子さんから戦時中の話を聞き、気になって調べ出す。ラジオ番組のディレクター、小泉将臣氏が情報を提供。二人は全国を飛び回り日本の隠蔽された黒歴史を暴いていく。
    小泉将臣氏は大谷翔平と江口洋介を足したようなカッコ良さ。

    ②『被爆樹巡礼』
    原爆投下によって被爆地周辺は「75年間は草木も生えぬ」と言われた。だが一面焼け野原、放射能の地獄の中から芽吹く樹木があった。研究者、作家の杉原梨江子(髙宮千尋さん)はカメラを持ち被爆樹木を訪ねて回る。絶望の底にいた被爆者達に生命の神秘が希望の灯となる。生命がそんなに不思議なものならば自分にだって奇跡は起こるのだと。

    ネタバレBOX

    演劇としては弱い。ただ事実を紹介して回るだけ。犬猫や樹木を手塚治虫的に擬人化して物語を綴るべき。人間の目線ではないものを描けるのは虚構の強味。

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