メタ・クセナキス 公演情報 メタ・クセナキス」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 3.0
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  • 実演鑑賞

    満足度★★★

    「力強い演奏と舞のコラボレーション」

     パーカッション奏者の加藤訓子がギリシャの現代音楽家であるヤニス・クセナキスの打楽器作品を演奏し、それに合わせて能楽師とコンテンポラリーダンサーが踊る。2022年に彩の国さいたま芸術劇場で初演した「クセナキスと舞」の一部再演である。

    ネタバレBOX

     第一部では「ルボンa」「ルボンb」に合わせ、観世流シテ方の中所宜夫が舞った。跳ね返るという意味のある曲名通りにゆっくりとしかし激しく弾く加藤の演奏を背景に、中村は四角く照明が当てられた空間で舞っていく。ドラムのタッチはじょじょに激しくなるが中村は揺るがない。いつもの能楽堂で謡や笛、鼓で観ている能楽師の身体が、西洋の太鼓を背景に観るとより土臭く大陸的に見えて面白い。せっかくなので前シテが後ジテにヅカッと、なにかに取り憑かれたように変わる振りも観てみたかった。

     第二部は12名の若手演奏家による「プレイアデス」である。第一楽章のみ加藤が指揮に入り、あとは各楽章ごとに演奏家が入れ替わる。特に印象的だったのは第二楽章冒頭の鉄琴の合奏がうねりような倍音を生み、あたかも眼前に水の流れを見るが如くであったところである。また第四楽章で主旋律が聞こえなくなったあとにまた別の旋律が生まれては消えていくくだりを繰り返したところは、先月京都で聴いた同じパフォーマーたちによるスティーヴ・ライヒ作曲の「ドラミング ライヴ」を想起した。

     第三部は加藤演奏による「プサッファ」に合わせコンテンポラリーダンサーの中村恩恵が踊った。アジア的に聴こえる冒頭の三拍子の太鼓の音色に呼応するかのように、左右の手先を広げ拍子に合わせ左右の膝を落とす鋭角的な動きがまず目に付く。そのうち急に地響きのような大太鼓の音がすると、落雷に撃たれたかのように中村の身体は崩れ落ち、そこからまた胎児が成長するかのようにゆっくり動き始めて、また冒頭の鋭角的な動きに戻る。気がつくと第一部で中所宜夫が舞っていたのと同じ四角い照明の縁を動いていき、やがて普通の二足歩行になると、美しいガラスの装飾のコンパクトに収められていた化粧をし、ガラスの椅子に戯れると、美しい玉に頬ずりをして幕となる。胎児が少女となり、やがて女王になるまでのひとときを観たかのような心地がした。

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