害悪 公演情報 害悪」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 5.0
1-1件 / 1件中
  • 実演鑑賞

    満足度★★★★★

    戯曲は(おそらく)三度目の上演で、団体のキャリアから考えると上演機会多め。自信作なのだろうと想像するし、実際に、団体の特性や活動意義を反映させた力作だと感じます。同時に、より広い観客層に響き得るというか、適切な言葉ではないかもしれないが、ポップな作品、間口の広い作品に感じられました。集客状況も良く、あらゆる意味で、団体の今後の可能性を感じる公演でした。

    ネタバレBOX

    現在より人工知能が発達し、AIによる統治が可能になった架空の近未来。仮想空間で行われる「第三次世界大戦」が長期化し、人々は今も戦時下を暮らしている。日常生活に戦争の色合いはさほど濃くないものの、出兵、戦闘行為、戦死などの状況が、身近に忍び寄っていた。

    登場人物たちは、それぞれの関係性で「戦争」と関わりを持ち、日々の生活を送りつつ、戦争の影響を少なからず受けていた。ただでさえ生きづらい世の中なのに、そこに戦争が加わることで、更に混沌や絶望に苛まれる登場人物たち。

    戦争をテーマにしつつ、論点をそこだけに集約せず、様々な社会の縮図を取り入れた戯曲に感じられ、間口の広い作品だと思う。描かれる世界観も、使用される現代口語も、共に若い人へ届き得る共感性を有していて、そういう点も興味深かった。そして何より、若き作家が渾身の力を込める、加害性への自問や社会への鬱憤、どうしても拭えない絶望感など、作家の本気が伝わってくる一作でした。

このページのQRコードです。

拡大