平坂村事件 公演情報 平坂村事件」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 4.0
1-2件 / 2件中
  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    鑑賞日2024/11/26 (火) 14:00

    昭和38年秋、福岡県の農村で起きた投資詐欺(未遂)の顛末。
    石炭から石油への「エネルギー革命」が進行中で佐藤栄作や湯川秀樹が「時の人」であった時代を背景に描かれる騙す者と騙される者たちの「攻防」、どちらかと言えば騙す側に感情移入しつつ思いがけないどんでん返しで終わる運びに感服。
    また、詐欺師、(その片棒を担がされる)科学者を筆頭にキャラクター設定と配役も的確で説得力があった。

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    鑑賞日2024/11/26 (火) 14:00

    詐欺って心理戦だ。警戒心が強い人々は簡単には騙されない。
    そう思って観ていたら、騙されていることに最後の最後まで気づかない者もいた。
    出ハケも難しそうなあのスペースを上手く使って、凝縮した人間関係が渦を巻く。
    詐欺師、誠実そうな座長北川さんが演るからますますそれっぽくて良い。

    ネタバレBOX

    開場して中へ入るとウナギの寝床のようなスペースが奥の方へ広がっている。
    奥が舞台スペース、演者の出ハケは客席の横を通るしかない。
    正面黒板の前に横長の机、古びた木の丸椅子が点々と置かれている。
    詐欺師佐宗がカバンを持って現れ、化学や技術で皆を煙に巻く詐欺の幕開きだ。

    斜陽産業石炭、その燃えカスである灰から再び石炭を作り出す技術を開発した、
    という触れ込みで詐欺師佐宗が化学者を連れて平坂村へ乗り込んできた。
    昭和38年、エネルギー政策は石油への転換期を迎え石炭はもはや見向きもされない。
    石炭を掘って運んできたこの村は今、存続さえ危ぶまれる危機に瀕していた。
    やがて平坂村は一丸となって、夢物語のようなこの話に乗ってくる。
    だが詐欺師も予想しなかった事態が起こる・・・。

    詐欺の話でまず重要なのは、騙し騙されるその状況設定だろう。
    社会的・時代的に追いつめられた村・・・ひとりや二人ではない、
    この”村”規模がそのまま金額のデカさにつながる。
    キーマンとなる土地の有力者三姉妹が、所謂世間知らずでもただのお嬢様でもない
    知識も社会性も持った女性であることが、騙されるプロセスをリアルにする。
    ダイナミックな展開と繊細な人物像が相乗効果を生んでいる。

    そして騙される人間の心理が刻々と変わっていく様が面白かった。
    一転して状況が良い方向へ変わると見た時の我を忘れるような高揚感、
    合意が集団になった時のうねりの大きさ、暴力的なまでのエネルギー。
    結局詐欺計画がほころびるのも、それら騙される側の熱い心理が原因か。

    だが本当にびっくりしたのはラストのどんでん返し。
    詐欺がばれて逃げるとかいうよくある展開ではない。
    詐欺師自身が騙されていたということ、
    そして何より、詐欺師を騙していた者の深い思いだ。

    伏線をこんな風に回収するところが、サスペンスを得意とする柳井さんの持ち味。
    「戦争が終わって、騙されていたことに気づいてから、みんな元気になった」
    と言う言葉が、唐突ともいえるラストに不思議な明るさをもたらす。

    三姉妹のキャラが鮮やかで、騙されたと知ってからの行動も力強く素晴らしい。
    気弱な科学者がラスト、情熱と自信を取り戻して吠えるところがとても好きだ。
    詐欺師が必要以上に饒舌でなく、むしろ個別に女性たちと話す時には物静かで
    ひょっとすると改心して計画を断念するのか?と思わせるところが絶妙過ぎる。
    北川さんのたたずまいが詐欺師に見えないので、逆に詐欺師にぴったり。

    詐欺師を騙した”すごい策士”の心情をもう少し聞きたい気がした。
    それとも語らせないからこそ、私は終演後こうしてずっと考えているのだろうか。
    十七戦地の舞台はいつも、後から反芻せずにいられない。

このページのQRコードです。

拡大