満足度★★★
寺山修司脚本による『くるみ割り』
バレエの名作『くるみ割り人形』を子供用アニメーション化するために寺山修司が書いた脚本(結局アニメは作られなかったそうです)をバレエ化するという興味深い作品でした。台詞や歌もあり、振付もバレエ的な動きだけでなくコンテンポラリーやジャズダンスの動きが取り入れられて、親しみ易い内容でした。
支那の国の皇帝の娘、マリーがネズミの呪いによって歯がネズミの歯の様になってしまったのを治す物語を主軸に、コッペリウスやヘンゼルとグレーテル、ヨカナーン等、他のバレエやオペラの登場人物が現れ、コミカルな雰囲気でした。
プティパ版では第2幕は世界各国の踊りが続いて物語上の展開があまりないのですが、今回のバージョンでは物語としての流れがありました。ラストではプティパ版に比べて夢を積極的に引き受ける様な展開になっていたのが印象的でした。
ダンサーは技術的にはもうちょっとという感じでしたが、表情が豊かで魅力的でした。歌ったり台詞を話ながら踊る人が凄かったです。
それほど広くないステージなので、コールドバレエのシーンでも10人程しか踊らず、またその人数でも動きやポーズが揃っていなかったなが残念でした。
セットは舞台奥にマジックミラーのフィルムを張った可動式のパネルを5台並べただけと簡素でしたが、パネル越しに青白い幻想的なシーンを見せたり、回転させて出捌け口に使うなど巧みに使われていました。
コールドバレエの時はダンサー達の姿が反射してボリューム感を出していて良かったのですが、パドドゥの時は目障りに感じました。
ちなみに音楽はチャイコフスキーのバレエ音楽をほぼ全曲とチャイコフスキーの他の作品を使っていて、いくつかの曲にはメロディーに歌詞を付けて歌っていました。