七人の墓友 公演情報 七人の墓友」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 5.0
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  • 実演鑑賞

    満足度★★★★★

    鑑賞日2024/06/22 (土) 14:00

    座席1階

    かつて別の劇団で上演されたこの演目を見たが、やはり本家のラッパ屋の芝居だ。数多く散りばめられている珠玉のせりふを、客演を含めた座組が自然体で語っていく。この胸に刺さるせりふたちを家に帰って味わい直すために、物販コーナーで台本を買うといいかもしれない。

    この台本が書かれた10年前よりも、今はお墓や関する世間の意識は大きく変わり、友人同士で樹木葬をしたり、散骨したりするという「墓を持たない」あり方が多様化してきた。葬式も親戚一族郎党ではなく、ごく小さな身内に友人を加えたコンパクトな葬儀が主流となってきた。
    それは、本家とか長男とかという「家」の存在が希薄になってきたからであり、家族のあり方が多様化してきたからだ。この芝居でも登場するが、特に近年はLGBTQへの理解が広まり、性別を超えて家族を持つ考え方に違和感がなくなってきた。この芝居は、世間の風を敏感に受け止めて書かれたものだと分かる。

    登場する群像のうち、「家」の象徴であるお父さんは亭主関白で、男は妻や子どもたちのために働き、妻は夫に従って家族を支えるのが当然という考えに凝り固まっている。妻は理不尽なことに不満をためながらも夫に従ってきた。だが、子どもたちは違う。かろうじて長男は家族を持って孫を連れてくるなどしているが、次男はアメリカに行ってゲイの同居人を連れてくる、長女は40歳近くになっても独身で会社の上司と不倫している、という人生。お父さんのせりふには、昭和の時代では当然のように連発されたが今では「不適切」な言葉が飛び出してくる。台本が書かれてから10年、世の中が急速に回転していることもよく分かる。

    15分の休憩を挟んで2時間半の上演時間だが、一気に突っ走った方がよかったかもしれない。演出はラッパ屋らしく手作り感あふれる温かな感じで好感が持てる。それよりも何も、登場人物の多くがさりげなく語る珠玉のせりふが、とにかく胸に刺さる。もう一度、客席に足を運んで堪能したい芝居である。

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