獅子の見た夢―戦禍に生きた演劇人たち 公演情報 獅子の見た夢―戦禍に生きた演劇人たち」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 4.5
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  • 実演鑑賞

    満足度★★★★★

    鑑賞日2024/04/13 (土) 13:30

    初演以上にしみた。カーテンコールで拍手しながら、立ち上がりたい気持ちが湧き上がって仕方なかった。
    ただ「芝居を続けたい」という思いに突き動かされて冒頭で示された運命に突き進んでいく彼ら。八田と三好の会話に応えるように舞う姿が胸に響いた。

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    桜隊が原爆で全滅したことをめぐる芝居だが、桜隊(特に丸山定夫=南保大樹)よりも、演出家の八田元夫(能登剛)と劇作家の三好十郎(星野真広)が強く印象に残る。最後に、丸山の死に責任があるのは誰か、丸山の堕落を厳しく批判して映画をやめさせた三好十郎が丸山を殺したのではないかと、二人が語り合うシーンが印象に強いせいだ。また、桜隊の「獅子」の稽古を三好が見に来て、我慢できなくなって、役者たちをくそみそにこき下ろすシーンが格段に秀逸だからだ。

    1940年から次第次第に厳しくなる新劇人へのしめつけと、その中で芝居を続けるためには、移動演劇連盟に入るしかなく、また広島へ行くしか選択肢がなかったという苦境が、劇団内の議論で示されていく。疎開や、軍都・広島に感じた危険性から、俳優がどんどん抜けて、その代わりの俳優を探す。そうして彰子が加わるのである。彰子は、大映の女優の友達も誘い、その彼女も原爆で亡くなった。

    桜隊の話に並行して、出征した夫・かもんに宛てた新妻・女優の彰子(あきこ)の手紙が挿入されていく。彰子は結局、桜隊に加わって、原爆死する。(原案になった本を読むと、この手紙は、戦後50年以上、カモン(映画「無法松の一生」で、息子役を演じた俳優)が保存していた、妻からの手紙の現物である。それを知って、感動した)

    桜隊が演じる「獅子」のラスト、丸山定夫の獅子舞は、それまでの2時間の集大成にふさわしい、リアルで生き生きした場面だった。園井恵子(  )の演じる慌てふためく農家の国策おかみをおしのけて、丸山の堂々としたせりふ「それが人間じゃぞ」の晴れやかさがよかった。2時間20分(15分休憩込み)

    ネタバレBOX

    観劇後、原案の堀川惠子「戦禍に生きた演劇人たちー演出家・八田元夫と「桜隊」の悲劇」を一気に(特に後半を)読んだ。三好の「獅子」の稽古でのダメ出しは、八田の遺した膨大なメモに残っていたもので、だから罵倒言葉が格段に個性的でリアルだったのだ。他にも丸山についての三好の言葉など、ほぼ八他の記録からそのままとっており、舞台でも非常に強い印象を与えた。三好と八田が戦後に抱え続けた「戦争責任」のとげも、本書でより深く知ることができた。
    丸山定夫の戦意高揚映画出演や、戦時ラジオへの出演の問題も、これまでになく掘り下げて書いている。その堕落から脱却を目指した丸山の再起をかけたのが「苦楽座(=桜隊)」であり、その良心的行動が、広島での被爆死に結果したという歴史の皮肉には、簡単には素通りできない重いものを突き付けられる。


    八田が自身の戦争責任と向き合った戯曲「まだ今日のほうが!」は5年前にみたことがある。本書によれば、「まだ今日のほうが」のドイツ語挨拶をめぐる兄妹の会話が核心だそうだが、私の感想を見直すと、そのことは全く触れていない。妹と元活動家の恋人の、左翼活動の堕落をめぐるやり取りに目を奪われてしまっていた。

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