実演鑑賞
満足度★★★★
無意識によく知った「かもめ」の台詞をなぞりながら見始めて、そのノリの違いに戸惑った。ニーナは初めからちっともコースチャのことなんて眼中にないし、無軌道で良くも悪くもわがまま。コースチャもよくいう中2感という以前に、その文学的教養や素養を疑いたくなるほど、落ち着きがない。
だがやがてそれが、チェーホフの書いた登場人物の特質を現代社会に落とし込んだものだとわかってくると俄然面白くなってくる。それにしても、俳優が上手いせいなのか、ここに出てくる人物はみな、ショボすぎやしないか。いや、人間それぞれにしょぼく、エゴイスティックなものなんだろう。それが、この上演の核となり、ドラマを動かしている。
やや物足りないのは、この劇の背景にある文化や社会がさほど立ち上がってはこないこと。現代版であるなら、「あるある」以上の今日性に触れたいし、そうではないのだとしてもこのドラマが生み出された背景としての時代、社会とのつながりを見たい。
実演鑑賞
満足度★★★★
「愛情と承認の物語」
ドイツの演出家であるトーマス・オスターマイアー率いる劇場、シャウビューネが2023年に初演した『かもめ』である。初演からわずか1年あまりの来日に満場の客席が大いに湧いた。3時間半の上演が苦にならない充実ぶりである。