満足度★★★★
楽しいオペラアリアのひととき
本来は「クラシックコンサート」に分類される催しなので
ここに紹介できるかどうか、ギリギリの線かと思いますが、
第2部は、振りや、最低限の小道具・衣装など、そして解説も用意された、
オペラアリア・名曲をたっぷり聴けたので、
「オペラ振興」のためにも、紹介してみようかと思いました。
その前に、せっかくなので第1部についても簡単に。
若手奏者4人(東浦亜希子(ピアノ)、佐原敦子(ヴァイオリン)、
西村知佳子(ヴィオラ)、門脇大樹(チェロ))による
ピアノ四重奏2曲(モーツァルト:第1番ト短調K.478、
シューマン:変ホ長調Op.47)で、
技術的にはしっかりしていたと思うものの、やはり若手だけに、
理屈っぽいというか、情感がもっとあれば、とは思った。
さて、第2部は4曲のオペラの5つの場面が登場。
1曲目は「セヴェリアの理髪師」より「フィガロと伯爵の二重唱」で、
最後はステージ下まで駆け降りるほどの熱い演技を見せた。
2曲目は「薔薇の騎士」より(終幕の)「三重唱」で、
これは、オペラ好きなら聴いてみたい!と思う曲。
正直、もう少し前の場面から聞ければ、
しみじみとしたこの場面がひときわ映えるようにも思ったが、
こちらも好演であった。
3曲目は「ノルマ」より「ノルマとアダルジーザの二重唱」で、
2人の巫女の嫉妬の物語…今日の演目の中では唯一の悲劇で、
地味な曲目だが、恋と巫女という立場に悩む心情が伝わってくる曲。
実は、主催の「東京ミュージックアーツ」は、
普段でも時々このタイプのコンサートを港区・高輪のホールでやる
団体なのだが、毎年夏のこの公演は特別なものと認識されているようで、
ここまで聴いたところ、普段よりも歌手のレベルが高いように感じた。
ただ、第4曲の「こうもり」の「第二幕・乾杯~Duidu」は、
小悪魔とも言えるアデーレ役がイマイチで、軽快で楽しい感じが
もっと出れば、と思った。
ただ、世紀末的な耽美性をも感じさせる陶然とした部分は、
中々素晴らしいコーラスで、感動!
最後の第5曲は同じ「こうもり」より「第三幕・三重唱~FINALE」で、
浮気を疑われている妻とその愛人(?)が相談している弁護士は、
実は夫が変装している…しかし、そうとは知らない2人は
あれこれ正直にしゃべってしまい、「変装弁護士」も時々怒りだし、
そしてついには夫であることを明かす。
2人は一度は仰天するが、しかし、この夫も昨晩の浮気がばれていた…。
なぜばれたかというと、浮気のつもりで、変装していた自分の妻を
口説いていたから…というバカバカしい話。
まあ最後は「シャンパンのせい」ということで、
賑やかに楽しく終わるのだが。
この曲も、アデーレも良くなったし、楽しい演奏だったと思う。
それから特筆すべきは、ピアニスト兼解説役の高木由雅さんが、
演奏も素晴らしいだけでなく、解説も何も見ないで、
歌われる部分を上手に説明されるのも見ものの1つ。
経歴を見ると「二期会ピアニスト」もされている方なので、
オペラの音楽にも筋にも造詣が深いのであろう。
1年に一度、上野の文化会館小ホールでやっているので、
ご興味のある方は一度聴きに行かれると良いと思います。