実演鑑賞
満足度★★★★★
チラシを見た時から「ヤッホーのホーが銀河に突き刺さる路地より遠い跳べば着く星」という短歌にまず心惹かれ、そこからタイトルが『ヤッホー、跳べば着く星』なことにもさらに惹かれて観劇を心に決めていました。がしかし!前売りが完売していたので不安を抱えつつ、かといって諦めきれず、えいや!っと当日券で駆け込み。無事観ることができました。かわいらしいチラシ、短歌とダンスという掛け合わせ。観る前から涌田悠さんの試みにある種すでにときめいており、始まってすぐ、目に映る景色を即興セリフとして発する演者さんの声、それに伴い発芽するようにうねり、隅々まで伸びゆく身体にグッと心を掴まれました。そこからはもうずっと涌田さん、石原朋香さん、田上碧さん3人がそれぞれ持つ身体性、眼差し、声色から目が離せなかった。
物語というのか、短歌というのか、言葉の舞台は荒川区西尾久の街から始まり、歩いたり、転がったり、おやつ休憩なんかも挟みながら、声とからだが時間と空間を遊泳していく。休憩の後のラップも楽しげだけど、どこどこと突き上げてくるものがあって、エンパワメントされている気持ちにもなったり。やさしくてつよい心、やわらかくて切実な力を端々に感じる時間と空間でした。
中野・新井の商店街の中にある会場「水性」との親和性も魅力の一つ。ガラスのドア越しに通行人の姿が見えるのです。そのことがこの公演や景色と本当に良く合っていて、境界が溶けて混ざり合っていくような不思議な感覚を覚えました。私が観た回では、思わず立ち止まってガラス越しのパフォーマンスをしばらく見つめているおばあさまがいらっしゃり、涌田さんが身体を翻し、扉に顔を向けてすうっと手脚を伸ばしていくまさにその途中に二人の目がパチリと合う瞬間があって、それを目撃した時なんだか奇跡みたいで、そこはもう一瞬宇宙みたいで、その時の二人の表情を見て私はなんでかわからないのですが、涙が出てきてしまったのです。あの瞬間に立ち会えたこと、考えるのではなくて感じる体と心でそこにずっといられたことにとても救われた公演でした。ごきげんに「キラキラのかわいい靴」を履いて行って本当によかった。帰り道、来た時よりもっとキラキラしてる気がしました。最後は短歌で締めてみます。
「透明の隔たり越しに生まれたてのほほえみ溶かすここは水性」