さるすべり 公演情報 さるすべり」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 4.0
1-1件 / 1件中
  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    異色作。2022年に前哨戦をやっていたのか。殆ど書き上げたばかりのをやったかの空気感だった。(大幅に書き直して、とあるのでそれはそうだったかも。)
    昨年の「ガラスの動物園」で見事なアンサンブルを俳優との間で形作った生演奏の川本悠自(b)と鈴木崇朗(バンドネオン)が付くというので、全幅の信をおいてチケット購入。千秋楽であった。
    ヘルメットを被ってトンカンやってるイベント準備の中、二人が入って来る(トンカンやってるのは演奏者二人と踊り手(松井夢)だったらしい)。渡辺が客席語りをしながら、高畑女史に過去の話題作の演技を再現させたりのサービスの時間。そこから、渡辺えり節全開な支離滅スレスレ(否ほぼ支離滅か)の展開へ。ピースを後付けで力技で繋いでいた。華麗な台詞回しと展開があるかと思えば、弾けないもどかしい場面も。「死ぬまでにやりたい事やる」宣言を「した公演」を含めて三つ目を数えたが、まだまだ随分続きそうな勢いでもあり、通常ペースで見守る事にするか・・。

    ネタバレBOX

    導入はコロナ禍の「コロナ」を思い出せず、「何で私たちは4年間も自粛してるんだけ」と思い出そうとするやり取りから。「八月の鯨」をモチーフに、老いた二人の姉妹がどうにかこうにか生きてる風景だ。駄弁りが芝居の基調でちょっと笑える会話や風情に客席からはドヨと笑い声が起きる。八月の鯨のベティ・デイビスとリリアン・ギッシュを舞台で演じたいと思っている二人の稽古風景でもあり、即ちもっと老いた渡辺と高畑の未来予想図、といった趣きもある。だから二人が八月の鯨を抜けて、別の物語を生きる場面も点々とある。
    「これはアングラなんだから」と序盤で渡辺が高畑に言う。戸惑う新人に宣告するニュアンスは、アングラ組から新劇組への宣告というより、「際物」から「普通」、「貧乏家庭」から「恵まれた家庭」への妬み半分の宣告にも聞こえる。カテゴリーにこだわるつもりはないが、小劇場演劇(遊眠社や第三舞台、劇団3○○(元2○○)、第三エロチカといったあたり・・見れば三の付くのが多いな)は確かに、アングラの延長と言って差し支えなさそうであり、「アングラ」と自称するのに何ら不自然はない。
    物語らしきものはある。途中「種明かし」的に伏線を回収する体で、二人の共通の知人らしい「みつお」に言及される。「忘れようとしてた」から話題にもしなかったが、思い出した、と。二人の弟である彼は窓からさるすべりに飛び移ったり、平らになった枝にひもをかけてブランコを揺らしたりした思い出。ところが実は「みつお」は高畑の息子であり、高校時代に出会って感化された大学生との間に出来たが逃げられ、一人で生んだ。そして「みつお」は高畑の夫でもあった・・。そんな相の変化が断りもなく起きるので、台詞から人物関係図を完成させようとする脳では、到底追いつかない。「男」の持つ位相を「みつお」に代弁させたものと強引に解釈して観劇を続けた。
    最終的には楽曲で締められる。パンチのある渡辺氏の声が歌の時である事を告げると効力覿面、終幕へと船は動き出す。無事進水すれば大団円、不思議な旅は終わりを告げる。このとき涙を拭う仕草を前の客席に認めるが、私はと言えば「夢の泪」の珠玉の歌を観た後である。そう簡単に騙されんぞと、肩肘を張る。だが席を立つまでがお芝居。舞台を終えた渡辺えりの語りに会場が沸く。手練れであるな・・ここは降参とするか。
    「八月の鯨」に寄せた家族の物語の「みつお」を巡る悲劇は彼がさるすべきの木で首を吊った事。「果実のように」と表現し黒人の自殺に重ねている。八月の鯨の稽古を抜け出て、機動隊と対峙した全学連時代を潜り、爆撃のある戦時下を潜り抜ける。渡辺女史の社会派がほぼぶち込まれている。

このページのQRコードです。

拡大