密航者~波濤をこえて~ 公演情報 密航者~波濤をこえて~」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 5.0
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  • 実演鑑賞

    満足度★★★★★

    懐かしい嶋津与志さん。30年ほど前に映画「GAMA月桃の花」で取材した。この戯曲は知らなかったが、戯曲と俳優の熱演と相まって、いい舞台だった。
    沖縄出身の女優外間結香が、芯の強い沖縄女性を好演。取調官(清田正浩)は、米軍の犬としての強権ぶりと屈従がよくわかる。ブザーが鳴るたびに追い詰められていく様が、しょせん米軍のコマにすぎない苦しさをよく示していた。
    取調室から、照明一つでシームレスにヒロ子の部屋、清次郎(齋藤慎平)との回想へという演出がうまかった。

    清次郎は直情径行な男で「坊ちゃん」のよう。米軍の土地とり上げに義憤を感じて、伊佐浜の米軍基地の鉄条網を切ったり、横暴な米兵たちに大工道具を振り回して一人で立ち向かったり。齋藤氏に作者嶋は「あれ(清次郎)は馬鹿なの」と語ったそうだ。あんなふうに馬鹿になって、米軍に歯向かいたいという願望が書かせた人物だろう。

    ネタバレBOX

    最後、取調官は、清次郎を反米活動家として有罪にするための証人になれ、そうすれば密航の罪は許してやると持ちかける。ヒロ子は「見損なうんじゃないよ」とばかりに当然拒む。脱走した清次郎が天海に密航しようとして拿捕されたと知って姿勢を正す。「清次郎が私に合うために密航しようとしてくれた。私にはそれで十分」と。
    「私を罰したって、密航者は私で終わらない。次々私のあとがいる」
    まだ取り調べも収容所生活も続くが、芝居はここで終わる。ヒロ子はこの後どうなるだろうか。最後まで拒否し通せるだろうか

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