実演鑑賞
満足度★★★★★
現在上演中の新国立劇場バレエ団の『ラ・バヤデール』4公演目を観た。
主要な配役の内重要な4役を挙げると、ニキヤを柴山紗帆、ソロルを速水渉悟、ガムザッティを木村優里、大僧正を中島駿野が演じていたが、個人的には久しぶりに観る木村優里のファンである。
バヤデールというのは寺院の舞姫を意味し、主役はそのバヤデールの中でも美貌の持ち主・ニキヤ。このニキヤに恋した高潔の戦士ソロルの悲劇を描いたのがこの作品で、悲劇を作り出したのはニキヤに横恋慕する大僧正とソロを愛するガムザッティの愛憎劇。結局、ガムザッティの侍女の渡した花かごから現れた毒蛇によってニキヤや絶命し、ニキヤへの愛を貫こうとしたソロルは大寺院崩壊の下敷きになって絶命する。いや、元々は絶命するものの、2人は天上で結ばれるというのがこの作品の原作で4幕ものであったのを、初演後に近年一時4幕目をカットして上演していたものを、4幕目の内容を3幕内に取り込んで上演するようになっていたのだ。ただ、新国立劇場で採用している牧阿佐美版は天上で2人が結ばれるというハッピーエンドで終わらせず、ソロルは寺院崩壊で死に、ニキヤは天上へ向かうという演出となっている。『白鳥の湖』の結末のように、ハッピーエンドで終わらせていないのが、観客に訴えかける何かがある。
そう言えば、この作品は『白鳥の湖』と並んで「ホワイトバレエ」の代表作の1つに数えられているそうだが、3幕冒頭のコール・ド・バレエのシーンでアラベスクを繰り返してジグザグに山をおりてくるところがホワイトの印象が強かったが、その他の場面ではむしろエキゾチックな場面が多いように思われた。
音楽はミンスク作曲。バレエのファンで無くてはミンスクという作曲家の名前を知る者はおそらく多くはおるまい。チャイコフスキーほど洗練されてはいないが、ダンサーにとっては踊りやすい音楽だろう。
さて、ソロル役の速水はこの役でのデビューとの事だったが、無難に乗り切った感じ。ニキヤとガムザッティに対する対応に、もう少し差があっても良いのでは無かったろうか。
柴山は、まぁ無難なところ。ソロルに対する表情が豊かであってほしかった気はする。
ガムザッティの木村、こう言う気の強い女性もしっかり踊れるのには感心した。こうなると、小野や米沢のニキヤを観てみたくなった。