かぞくのわ 公演情報 かぞくのわ」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 4.0
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  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    いや観に来て正解、才能あるわ。『マグノリア』だよね、全くハッピーではないけれど。
    開幕早々、寺園七海さんがぶちかます。成程、役者の調理法をよく判っている。寺園七海さんは武器を手に入れた。

    家族、若しくは家族という概念に苦しんでいる人間の群像劇。産んだ子供を愛せない人妻デリヘル嬢。幼年期に受けた虐待の経験から恐怖のトラウマが常にフラッシュ・バック、それを克服しようと過剰に自分を偽り残酷に振る舞うもう一つの人格。

    優しいお母さん、青海(おうみ)アキさんがMVP。母であり妻であり女である。
    その夫、村山新(あらた)氏も好演。笑顔で「しゃぶって」。ゼットンとキングジョー(?)のフィギュアを握ってブチ切れる演出は最高だった。
    長女、斎藤茜理さんは平均的な女子。
    次女、蟹江煎さんは漫画家の才能があるトランスジェンダー。

    売れっ子漫画家の羽田敬之氏は妻に先立たれ、娘の育児を含む家事を学生時代からの友人、久間健裕氏に任せている。久間健裕氏は本業がお笑いで、相方は寺尾みなみさん。まだペエペエのコンビ。
    漫画雑誌の編集者、小林桜子さんの感情のこもらないボイロ風会話が面白い。

    明知広樹氏は半グレのような生活で弟・古賀紘汰氏の大学の学費を賄っている。この明知広樹氏がガチの犯罪者の臭いをプンプンさせている為、兼ねているABEMAのお笑い番組の司会役の時に心底ホッとした。古賀紘汰氏は蛍原徹の髪型ですぐにパニックを起こすボーダーを好演。

    陽キャ女子高生、清水未来さん。
    眼帯をするシーンもある五月女(そうとめ)泉さん。
    金髪のららしえら!さん。
    青木理歩さんは義父の性的虐待に怯えている。

    お茶を挽く人妻デリヘル嬢、冬野泉さん。
    巨乳の雪月彩瑛さん。
    今作の光である、福谷まるさん。

    こういう鬱話の連打なのだが、退屈させない技量が凄い。キャラが皆立っている。人妻デリヘル店の待機している風俗嬢なんか、今作で一番解放されて見える。

    鬱話でげんなりさせてオシマイの、その手の作品かと思い、当初観ようとは思わなかった。不幸の共有なんてもう腹一杯食い尽くした。だがいざ観てみると、驚く程希望に溢れている。痛みと優しさの共存。

    『今度はオレらの番さ』The ピーズ

    絶望なんか気のせいさ、全くよ
    死んだ方がマシなんて、勘違いよ
    Hey,Baby 冴えないまんまでも笑えるよ
    相棒がいれば勘違いもしねえ

    ネタバレBOX

    子供を愛せず虐待を繰り返してしまう寺園七海さんの吐露に、福谷まるさんはその痛みを全部抱きしめてあげる。「それが普通だよ。」

    一番の名シーンは狂った母親に殺されかかる程の虐待を受けてきた明知広樹氏が、ボロボロ涙を流し洟を垂らし同じ境遇の寺園七海さんの息子に語り掛けるところ。「お前がいるせいで母ちゃんはああなっちゃったんだぞ。」時空を超えて久間健裕氏も同じ場所にいる。二人がまるで会話をしているように心の痛みを決壊させていく。

    浮気を繰り返す妻を奴隷契約で縛り付け、虐待し続けてきた村山新氏。そんなに歪ませてまで自尊心を保ち、家族ごっこを演じてきた自分自身の悲鳴に気付く。「離婚しよう。」どんなに嘘を重ねても心の傷は癒せない。諦めよう。

    ドラマ的な悲痛な告白をタフな登場人物達は軽くいなす。「いや、家族なんてそんなもんだよ。」泣いたり喚いたりそんな特別なもんでもないよ。小説漫画TVドラマ映画、虚構に毒され過ぎなんだ。人間なんてそんな高尚なもんでもない。ちょっと知恵のついた猿。ほんのちょっとだけ。

    『スーパーソニックジェットボーイ』THE HIGH-LOWS

    俺には不安なんかない TVの馬鹿が煽ってる
    トラウマの大安売りだ そんなに大したものかよ

    どうでもいいじゃないか そんなことはどうでも
    どうでもいいじゃないか そんなことはどうでも

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