実演鑑賞
満足度★★★★
最近は精力的に本格公演を打っている劇団劇作家の久々の「劇読み!」。行けたのは2日目「玄界灘」のみだったがこれが傑作だった。金達寿による同名小説の原作を約90分(通常上演をやったとしても100分程度ではないか)の上演にした。この内容では中々の大著だったのではと窺わせるが、この尺に収めた脚本も高い出来である。
追記するつもりでいたが打っ棄ってしまっていた(忘れていた)。
上の文章がなぜか馬鹿に淡泊なのだが、このリーディング公演のインパクトは強烈だった。日本による植民地支配の動的側面を活写した原作の戯曲化で、昨年同劇場で上演もされたが、このリーディングに集った役者の台本を持ちながら淀む事なく熱演する様子(台詞の無い時間も台本の文字をドラマと同期して追っている)、そして動線などの最小限の演出にも関わらず、観劇後は普通に演じた舞台を観た感覚が残った。
支配構造の中でうまく立ち回る事に命を賭けた(ケツを差し出しケツを舐め続ける)現地人、親日派の裕福な家庭に生まれニヒルな日常を送るもやがてレジスタンスに加わる御曹司、その家族、日本から帰郷し有利な就職口を得るべく御曹司の父に口利きを頼んで来た旧友、その男を追って海から渡って来た日本人女性、京城警察署長、レジスタンスの者たち、等等。力による支配がもたらした現実は理不尽なものでしかあり得ないという(当り前の)事実がリアルに描かれる。怨嗟の物語を歴史から切り取った。。