実演鑑賞
座・高円寺劇場創造アカデミー修了生が集っての作品が松田正隆氏演出の下、昨年夏より数次の稽古を経て発表に至ったとの事。
現代日本を独自に切り取った風景描写であるが、台詞量がかなり抑えられ、動作による表現が大部分を占め、その読み取りに苦労した(面白さもあるが、不明のまま放置せざるを得ない部分の割合が少々高い)。
タイトルにある「東京」をさほど気にしなかったのだが、白昼の銀座高級時計店の強盗事件を、地方の人はどう見ているのだろうとふと気になった。東京=日本の代名詞、とは限らない。
座・高円寺1は兎に角広い。このだだっ広さを活用し、何もない平面を数名の同世代(三十前後)の男女が動きまわる。照明も終盤の二、三の暗転以外は、同じ明りでステージを満遍なく照らし続ける。
言葉による説明を極力省いて作られた事は、役人物の同一性や、動作の意味等で不明瞭な点が幾つか生じた。不明部分が大きいと変数の多い方程式と同じく類推を諦めてしまう。
近年の松田正隆氏は、福島という土地かに因んだ継続的な仕事をしていたが、その手法の延長に今回の作品もありそうだ。難解というイメージが更に固定した感ありであるが、人間のちょっと笑える風情を体現した俳優たちの身体は緩みがなく、地味にポテンシャルを示していた。