殺意(ストリップショウ) 公演情報 殺意(ストリップショウ)」の観たい!クチコミ一覧

期待度の平均 5.0
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  • 期待度♪♪♪♪♪

    (某日に稽古場を見学させていただいた時のレポートです)

    3月8日(金)から10日(日)まで、APOCシアターにて、セツコの豪遊による演劇公演「ジャージのイタコ vol.1『殺意(ストリップショウ)』」が上演されます。

    本作は、第二次大戦前後の東京を生きた一人のダンサアが語る半生の物語です。尊敬、失望、怒り、諦念、あらゆる感情のうねりを、鋭く打撃力のある言葉の流れで以て、彼女が見た人間の真理を聞かせられます。

    役者の力量と熱量が問われるこの戯曲に挑むのは、これまでにも数々の小説をひとり芝居化してきた宮村さんです。宮村さんは、「APOCひとり芝居フェスティバル2018」でスタッフ賞を受賞したこともある実力者。

    2024年1月初旬。三が日が明けて間もないこの日にも、宮村さんは自身のユニフォームともいえる黒いジャージ姿で稽古に励みます。

    この日の稽古では、粗通しを見せていただきました。3月の本番までまだ2か月の猶予があると言うのに、もう通しを?! と驚いたのですが、早い時期から通して黙々と着々と芸を磨く宮村さんだからこそ、クオリティの高い作品を発表し続けられるのだなと納得しました。

    この通しを見せていただいて、私がこの作品をおすすめしたいポイントを3つ紹介します。

    1つめは、豊かな身体表現です。自身で演出をつけてのひとり芝居なだけあって、その一挙一動の説得力が違います。写実的に見せる部分もありますが、見どころとしては、完全に身一つであらゆる場面を表すのに堪え得る抽象的な表現です。それが観客の想像力を喚起して、戦時中から戦後のめくるめく世界観に引き込んでいきます。
    なぜ宮村さんが演劇という手段を選んでいるのかが垣間見えた気がしました。

    2つめは、「人を飽きさせないこと」「楽しませること」に対する拘りが光る演技です。例えば、独り芝居の醍醐味、役の演じ分け。主人公の語りをベースにしながら、他の登場人物の発言が時折出てくるのですが、声を使い分けて各登場人物を印象付けるのはもちろんのこと、主人公以外の感情の軽重の表現によって主人公の存在が浮き彫りになっているように感じました。
    また、全編を通して、内面から激しい感情が滲み出るような演技には脱帽です。それは訓練の賜物、滑舌の良さに裏打ちされた迫力のある早口の台詞回しや、真摯な眼差しで観客に対峙する姿勢という形で表出します。

    3つめは、戯曲の言葉の力です。
    戯曲中には役者にとって身につまされる台詞や、時代に翻弄される主人公の切実な心の叫びが語られます。それらをストイックに作品に向き合う宮村さんの口から聞けることによる意味の増幅と言ったらないです。芝居は言葉を伝える物なのだ、と改めて感じさせられました。あなたもドキリとする台詞がきっとあるはず。

    いかがですか? 観に行きたいなと思うポイントはありましたか?

    この文を書くにあたって、絶対にのめり込まずに冷静に、ドライに見ようと思っていたのに決してそれを許さない最高の熱演でした。稽古でこのクオリティ。本番はどうなってしまうのでしょう。そのうえ何か月もかけて創りあげられた上質な作品を、たったの3回の上演で消してしまう儚さ、潔さ……。絶対に見逃さないでほしい作品です。

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