満足度★★★
反転しながら反復
昭和時代の男女2人の生活を様々な手法を用いて幻想的に描いた作品でした。原作の漫画および、あがた森魚さんの曲も見聞きしたことがないので、どの程度舞台化に際して変わったのかは分かりませんが、どんどん世界が引っくり返って行くような展開が楽しかったです。
基本的には一郎を演じる寺十吾さんと幸子を演じる緒川たまきさんの2人芝居で、そこに石丸だいこさんが演じる幸子の分身的な存在が時折現れたり、あがた森魚さんがギターを抱えて歌いながら舞台に現れる構成でした。2人が言い合いになるシーンが何度もあり、片側の言い分が正しく見えていたのが、同じやりとりが再度繰り返されるときには小道具の処理によって正誤が逆転する演出が面白かったです。
膨大でしかも繰り返しが多くてややこしい台詞を相手に2人とも奮闘していたとは思いますが、寺十さんのミスが目立ったのが残念でした。キャラクターとしてはうだつが上がらない男の感じが良く出ていて良かったです。緒川さんは様々な声色を使い分け、可愛らしさの中にうっすら狂気を感じさせて魅力的でした。最近エキセントリックな役が続いているので異なるタイプの役も見てみたいです。
あがたさんの歌は味があってとても良かったのですが、舞台の進行にあまり絡んでいなくて唐突に感じました。チラシには書いていなかったのですが、5人編成のタンゴバンドも演奏し、迫力があってよかったです。前半はあまり出番がないのに舞台上に座っているのは観客としても演奏者としてもメリットが無い様に思いました。
しりとりになって延々と繋がる台詞や、手品みたいな瞬時の転換、映像に写し出されるシルエットと同期して動く役者など、天野天街さんならではの手法が沢山使われていましたが、それが物語から浮いていてまとまりがなく、間延びした印象になっていたのが残念でした。終演後に緒川さんと少し話したのですが、稽古時間が少なくて独特なメソッドを体得するのに苦労したとのことでした。もっと時間をかけて作れば手法や形式と内容が合致した統一感のある作品になったと思います。
満足度★★
幻想の昭和
濃密、かつシニカル。それが単なる郷愁でない、詩的な「昭和」を幻出させている。
あの時代にサブカルチャーの洗礼を受けた私のような世代には、
「…昨日もそう思った」
という決めゼリフにクラッとくる。でも単なる懐古芝居じゃない。
というかこれは全然懐古ではない。
じゃあなんなのかと言われると困るようなものだけれど。
満足度★★
初日、開場15分押し、開演10分押し。
舞台稽古が押したと思われる。
はっきり言って企画倒れ。
数個の優れていないアイデアと言葉遊びで1時間45分は持たない。
あがた森魚も、生演奏も、天野作品に合わず。
緒川たまき大健闘。寺十吾も健闘。だが空し。
まだ舞台転換等に手間取っている状態だから、行くなら楽日に近い方が良いと思う。