野に咲く花なら 公演情報 野に咲く花なら」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 5.0
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  • 実演鑑賞

    満足度★★★★★

    鑑賞日2024/01/28 (日)

    シアターグリーンにてファーストピック『野に咲く花なら』を観劇。
    「1日はあなたにも24時間、私にも24時間。同じ24時間をどう生かすかに人としての価値がある」。フライヤーに載っていたこのメッセージだけでなく、本編の中には心に刺さる台詞が数多く登場し、終始様々な感情に揺さぶられる見応えのある作品であったと感じました。人としての大事なことに気付かされる内容。これは多くの人が観るべき作品かと。
    指定難病・筋ジストロフィーの患者達が集まる病棟を舞台とした実話に基づいた作品というだけあり、とてもデリケートな内容でありながらも、現場の様子を忠実に、且つ、絶妙なバランスで描いた優良作品。個人的にこういう“学べる演劇”は大好きなのです。
    人間誰もが色々な問題と直面しながら生きているわけですが、時には逃げ出したくなる気持ちも生まれるもの。生き方や人生観は人それぞれですし、逃げたり辞めたり放り出すことで解決する可能性もある以上、逃げる選択肢も決して間違っているとは言えないのでしょうが、劇中に出てくる患者の「あたし達はどこに行ったって筋ジスから逃げられやしない」という台詞にはハッとさせられました。確かに、逃げるという選択肢すらない場合もあるわけで、逃げる選択肢があるだけ幸せなのことなのかもしれないな、、と感じてしまいました。ただ、だからといって安易に逃げる選択をするのでなく、筋ジス患者のように、逃げられないからこそ、今ある現実を受け入れ、その中でどう生きるかを考える。まさに「24時間をどう生かすかに人としての価値がある」という核となる部分かと感じました。こういう作品を観ると、嫌という感情や悩みは生きているからこそ生まれるものであって、それを含め、平凡で変わらない日々こそが幸せであるということに気付かされます。
    前日に拝見したALL GREENさんの作品からも「1日1日を大事に生きよう」というメッセージが伝わってきましたが、今回のファーストピックさんの作品を観終えた後も同じような感情になりました。ただ、似たようなテーマであっても、方や完全に空想の世界で描かれた創作モノ、方や実際のモデルが存在するドキュメンタリーものと、全く異なる手法で描かれた作品であるのが面白いところです。どちらとも強いメッセージ性が秘められているのは間違いなく、両者とも秀逸で価値ある作品かと感じます。今回の『野に咲く花なら』という作品に限ったことで言えば、実際に筋ジストロフィー病棟の日常を覗いているかのような人と人との繋がり、苦悩や葛藤、喜びなどが感じられ、とてもリアリティ溢れる一本であったということかと思います。一方で、なかなか重いテーマであるにも関わらず、随所にほっこりする笑い要素やポップなBGMが散りばめられており、バランスの良い素晴らしい作品であると感じました。病棟のシーンだけでなく、主人公の家庭の中での日常シーンも良いアクセントになっていたような気がします。やはり人間は色々な人に支えられながら生きているものだなと。
    大変失礼ながら、カンパニーだけでなく、キャストの皆様もほとんど全員が初見(ザ・ギースのお二人のみテレビで拝見して知っている程度)でしたが、プロフェッショナルな素敵な役者さんたちが揃っており、非常にクオリティーの高い作品だと感じました。中でも山下聖良さん、乙木勇人さん、兵頭有紀さん、板橋廉平さんの役に成り切った自然体の演技はお見事。山下さんのシーンによってメリハリをつけた(心情を上手く表現した)演技が全体の印象をより高めていたような気がします。また、岡まゆみさんのナレーション調の丁寧な解説はとても聴きやすかったですし、圧倒的な存在感がありました。この他、森奈々香さんの熱演ぶりも印象に残りました。パンフレットを見ると、今回が初の商業舞台出演とのこと。非常に楽しみな役者さんかと思います。相澤瑠香さん演じる強気で繊細なキャラ、将平さん演じるユニークで癒やれるキャラほか、挙げればキリがないほどの一人ひとりの好演が素晴らしかったです。機会があれば、他の作品で他の役を演じられているお姿も拝見してみたいところです。
    当日パンフレットには「決してお涙頂戴の内容ではありません」とも書かれていましたが、客席のあちらこちらから鼻水を啜る音が聞こえてくるほど涙腺が緩む大きな感動や活力を与えてくれた作品だと思いました。本作のモデルとなった長谷川幸夫さんの詩集の配布も非常に嬉しいサービス。じっくり読ませていただきたいと思います。

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