満足度★★★★★
消えゆく者たちの魂が、青く美しく光る「蝶化身」となっていつまでも輝いている。
「ゲゲゲの女房」ブームは演劇界にも!
この原作、どうしても水木しげると鬼太郎や妖怪たちに引っ張られてしまい、
作家さんたちの興味も、気を抜くとそっちに行ってしまう。
本当の主役は、奥様の布枝さんの苦労話と、夫人から見たしげる像、とかにある。
NHK連続ドラマは、長丁場なので実に様々な側面を、
バランス良く掘り下げていた傑作だった!
映画版では、クドカンの水木しげるが似すぎていると話題だったが、
夫婦の超貧乏時代と、二人が本当に夫婦になるまでの部分に集中し、
これも成功作だったと思う。
しかも、わずかに挿入された目玉おやじと悪魔くんのアニメも
水木まんがのテイストを的確に再現していた!
さて舞台版は…
大ファンである主演の水野美紀さんは、背が高いのも布枝さん向き。
暗くなりがちな話を、いつものコメディエンヌぶりを発揮してうまく引っ張っていた。
しげるさん役の渡辺徹さんは、貧乏という役がぎりぎりできる程度の体格か?
こちらもコメディには定評がある。
申告した所得が低すぎて生活できるわけがないといって、
税務署員が調べに来る有名なエピソードも健在。
ここで税務署員に扮する桟敷童子所属の原口健太郎さんは、
牛乳瓶の底のような眼鏡に出っ歯というまさに「水木キャラ」になりきっていて爆笑。
さらには追い払った後に撒こうとした塩すら無いという、おまけつき。
このシーンは、貧乏が生み出した哀しい怒りの場面なのに、
夫婦二人の呼吸の合い具合がとても楽しい。
作演出が「桟敷童子」(←まさに妖怪の世界?)の東さんなので、
妖怪が出るシーンのライティングや、そのお祭りのようなにぎやかさは
まさに東さんの世界。
本作では全体を通じて、時代とともに淘汰され、消えていってしまうものへの
愛しさ、はかなさ、が強く残る。
大和田さん演じる紙芝居屋の最後の口上!
梅ちゃん演じる貸本屋は、胡散臭い景品で再起を図るも、
うまくいかず、それでも肉体労働で、しげるへの未払いの原稿料を残していく。
そして、居場所を失っていきながらも、しげるに御礼を言い続ける妖怪たち…。
そう、戦争中にジャングルの奥地で見た何万という青い蝶々は、
しげるを守ってくれた亡くなった兵士たちの魂だった。
消えゆく者たちの魂が、青く美しく光る「蝶化身」となっていつまでも輝いている。
満足度★★★★
にこにこきらきら
どうしても朝ドラと比べがちだけど、ここは無にして観よう!と思うことも無くとっても楽しくその世界に入り込んでしまいました。東憲司さんの世界がまたマッチするんですよね。妖怪たちもでてきて一緒に笑いたくなったもの♪