本郷菊坂菊富士ホテル 公演情報 本郷菊坂菊富士ホテル」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 3.0
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  • 実演鑑賞

    満足度★★★

    チケット受付、ド素人の仕切りで開演前からパニック。誰一人責任者がいない。中学生か?本当にこれ大丈夫なのか?誰もが不安に思いつつ茫洋と佇む。受付も全く始まらず、開場時間になっても混乱。質問に答えられる者は誰もいない。何故か衣装の洗濯とゴミ出し。
    「ゲネプロが演出家の駄目出しで押して・・・。」
    イライライライラしている人々。場慣れしたおばちゃんのお客さんが仕切って並ばせる。「いや、これ既に演劇が始まっているんじゃないのか?寺山修司の遣り口だ。」なんて思いつつ。

    昔、神保町の馴染みの中華屋で海老のチリソース煮を頼んだ日のことを思い出す。随分待たされてやっと出た物は糞不味くてとても食えたもんじゃない。店長達が休みで中国人のバイトしかいなかったのだ。皆で話し合って何とか作ったらしい。会計の時、「半額でいいです。」と言われた。いや、作れないんなら注文の時そう言ってくれよ。開演前からそんな気分にさせるこの劇団。何でチケットを予約したのかもう思い出せない。

    始まってみると随分しっかりとした舞台。よく纏めたな、と脚本に感心した。
    1967年瀬戸内晴美の『鬼の栖(すみか)』、1974年 近藤富枝の『本郷菊富士ホテル―文壇資料』、1977年羽根田武夫の『鬼の宿帖』。1975年実相寺昭雄のTV番組「本郷菊富士ホテル 大正遁走曲」(『歴史はここに始まる』)。1998年森光子主演の舞台『本郷菊富士ホテル』。他にもドラマや劇画など無数に存在するこのホテルをテーマとした作品。どれも観たことがないのでどこまでオリジナルなのかは不明。
    『美しきものの伝説』と時代背景、登場人物は重なるので観ていると判り易い。

    大正3年開業の帝大(現・東大)近くの高級下宿屋「菊富士ホテル」。田舎から上京して来た金井由妃さんは地元の親友、飯沼りささんに逐一手紙を送る。「憧れの東京で女優になってやる」と。住み込みとなるホテルの女将は上杉二美さん。そこには当時を彩るスター達が逗留し訪れては去って行く。大杉栄(坂西良太氏)、伊藤野枝(俊えりさん)、竹久夢二(生亀一真氏)、お葉(兼平由佳理さん)、谷崎潤一郎(小磯一斉氏)、佐藤春夫(坂西良太氏二役)などなど。島村抱月と松井須磨子の芸術座で研究生をしている上村いそ(森田咲子さん)も重要な役回り。

    MVPは上杉二美さん。お尻振り振り観客を沸かす。金の取れる腕を持ついい女優。
    加えて主演の金井由妃さんと森田咲子さん、この3人が舞台を見事に回した。舞台上の空気感を担う名演。
    変態性欲者の小磯一斉氏も名助演。

    上村いそは水谷八重子がモデルなのか?と思ったが違うっぽい。結局誰にもなれなかった者達が時代の天才達と交わったひと時の宴。寂しさと侘びしさとほんの少しの誇らしさ。
    女将の口癖「まあ、ええわいな。」がリフレイン。
    是非観に行って頂きたい。

    ネタバレBOX

    開演前SEは何故かエリック・クラプトン。
    「嫌なニュースを聞いて憂鬱を蹴り飛ばしたい時にはコカインを!彼女は嘘をつかないよ。」

    話はエピソードの垂れ流しに終始。そこにはやはり時代にボロボロにされた語り手が必須。「全てを失った今、思い出されるのはそう我が青春の『菊富士ホテル』!」でないと、ぐっと来ない。主人公が傍観者に徹している為、エピソードに味付けが足らない。全ての登場人物に交流を求められるも器用にかわすフォレスト・ガンプにした方が盛り上がった。(あの時ああしていれば運命は変わっていた、的な)。観た客に何を伝えたかったのかが散漫。ネタは面白いだけに残念。

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