『赤目』『長い墓標の列』 公演情報 『赤目』『長い墓標の列』」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 4.0
1-1件 / 1件中
  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    「長い墓標の列」。一年前にワークインプログレス(という名の公開稽古)を拝見して本公演が観られなかった作品。出演陣はどうやら新しいが、男女役入替えの趣向は変わらずで、一年越しで成果を拝見の趣きである。
    役人物が独特の立ち上がり方をする。女性は男性を演じるに不十分な身体、逆も然り。人形=形代の様式を連想するが、演技態が統一されてもいない。ワークイン..ではこれに加えて女優が素の女性に戻ってキャピキャピ演じたり遊びを織り込んでこれは悪ノリでは、と否定的評価であったが、見て行く内に骨太な戯曲が立ち上がって来たのであった。

    ネタバレBOX

    10分の休憩挟んで2時間50分程。二幕から神妙な場面となる。一幕は義憤で血気を沸かせているのと対照的だ。二・二六事件、日中戦争勃発と来たその翌年(1938年)のとある大学にて、マルクス主義とも資本主義とも距離を置く政体を唱える山名教授の「処遇」を話し合う会議が開かれるその時間、山名の弟子や学生らが元気に議論している。軍当局の目が大学に対しても鋭くなる中、学問の陶冶を受けた者の知的胆力がそれらを払拭し、大学自治にもとる大学当局を指弾する姿も快活である。これご彼らにとって青春の季節でもある事を象徴するのが、弟子の一人花里が山名の一人娘弘子に告白し、弘子は受け入れる、という場面。ところが二幕では「正論」が持ち得た威光が陰り、現実の前に敗北して行く。ここに至って彼女たちのかりそめ身体を通して言葉がそれ自体の意味を伝えてくる。
    山名と彼の一番弟子である城崎との議論は今の日本で為されて一向に不適合がない。圧巻。

このページのQRコードです。

拡大