満足度★★★★
9.11後のチュニジア
9.11NYテロ以降、台頭するイスラム原理主義的な動きに過剰な反応をみせるチュニジア社会の精神的状況がリアルに表現されている。
チュニジアは、イスラム紛争の中心であるイラク、パレスチナ、レバノンからは遠く離れたところにあり、イスラム国とは言っても観光資源の豊富な平穏な国であるように見える。
しかしこのチュニジアにおいても、9.11の影は大きな不安と恐怖を社会にもたらしているという現実をこの芝居は見事に具現化している。
暗く、重い主題に加え、主題の提示の仕方には幾分過剰に技巧的でかならずしもわかりやすいものではない。特に前半の展開は鈍重で、観客にも大きな忍耐が強いられる作品である。
しかしポスト9.11のアラブ世界の苦悩の一端を、卓越したリアリティとともに提示した優れた舞台であることは間違いない。