実演鑑賞
満足度★★★★
数年前に知った(この役者が書いて上演してんの?へー)劇団の情報に行き当たり漸く目にしたのが昨年の一人芝居オムニバス。言わば番外編的な公演だったが今回は一編の作品だ。何か原作があってリーディングをやって、朗読劇風で・・といった前振りが若干頭にあっての観劇。独特の語りに吸い込まれ、最後まで連れて行かれた。
主人公は自分が書きつけた日記を読むように語るが、ヒロインと言える女性(の未来の存在)、他の役も地文を語る場面が時折差し挟まれる。台詞の場面と、語りの部分の分量比といい、文体といい、センスがある。都会に出てきた純情青年の青春の体験が、何か人生の本質を穿つもののような、そのように語られる事で何かが報われるような、あのほろ苦い時間がややセピア系に寄せた照明の下、再現されていた。中心となる男と女の距離感=関係性はありありと想像され、他の人物も同様、その微妙な距離感の表現が絶妙でそこにも魅入らせるものがある。
秘かな才能がどの方向へと開かれて行くのか、密かな楽しみ。