実演鑑賞
満足度★★★★★
面白かったので、追加してリピート鑑賞もしました。
単奇怪な非日常感を味わえるカルトホラー的な作品として、すっきりしないわかりにくさも含めて、とても面白かったです。
考察しがいはきっとあって、そこには深いテーマ性が込められてるのでしょうが、それは観る側の資質、感性次第であり、作品自体では、押し付けてきたりはしてないと思う。
螺旋階段をおりての入場、闇とローソクの灯り(だけじゃないが)での観劇体験。
終演して階段を登ると、生き返る感じ。
ただ、何かが爪痕として残った感じはありました。
実演鑑賞
満足度★★★★
鑑賞日2023/08/26 (土) 19:30
本ユニットは2回目。ホラーっぽく宗教っぽく、的なややコワイ話。(2分押し)107分。
とある新宗教での女児虐待をきっかけに起こるホラーっぽい物語。かなりリアルに展開されるので充分コワイ。時間軸が動くので、分かりにくい所はあるし、展開に必ずしも納得できるわけではないが、問題提起として受け止めることはできそう。それにしても、アゴラでも宗教にハマる人の話をやってて、テイストは全く違うが、テーマがシンクロするあたりも興味深い。
実演鑑賞
満足度★★★★★
鑑賞日2023/08/24 (木) 14:30
座席1階
とてもおもしろかった。真夏の上演にぴったりの恐怖だ。カルトが徐々に人間関係を引き裂いていく様子が、比較的明るい会話劇を通して展開されていく。台本もよく練られていて、回転ドアのように登場人物が入れ替わる演出も戯曲にテンポと力を与えていた。舞台美術も秀逸だった。
最初に登場するのは、オーガニック野菜を栽培する農場。ここで汗を流す二組の夫婦はとても健康的に見えるが、不妊で悩んでいたり、別の夫婦は妻は2人目の子はもういらないと言い切って夫とぶつかるという、深刻な亀裂が見えてくる。実はこの農場、カルトと健全社会の接点。オーガニックだから取っ付きやすいし、魅力的だ。こういう設定がリアルで怖い。
舞台を見ている限り、これらの夫婦の亀裂は当初はそれほどでもないのだが、本当は離婚も不思議ではないというくらい深いものであると客席は思い知らされる。夫と妻は健全な家族であり、お互いを大切に思っている。だが、この小さな亀裂に水がしみこんでいくように、カルトが染み込んでいく。自然に、しかもこの道しかないというくらいな正当性を装って。このあたりも実に現実感を持って、うまく描かれている。だからこその恐怖は後段で募っていく。
謎の宗教のうさんくささに当初は抵抗していた夫が取り込まれていく場面も、とてもリアル。明らかに精神的な病気(幻視を見るなど統合失調症か)で治療が必要なのだが、その症状が「大地から取り込まれた明るいパワー」で軽減した体験を経て信じ込んでしまうというところも、あり得る話だ。カルトがあえて弱みに付け込もうとしているのではない。あくまでも自然な人助け、カウンセリングが実は落とし穴だったりする。
もう一つ、この戯曲の一翼を担うのがユーチューブなどの動画。興味があるものだけを見続けるというネット社会、SNS社会への強烈な批判が込められている。もしも彼らがテレビとか新聞とか自分とは離れたところのニュースに接していたなら、自分が見ている世界が広がることでカルトに取り込まれることはなかっただろう。
しかし、米国のトランプ前大統領の信者たちのように、何百万人の「健全な」アメリカ人が教祖をあがめるように心酔していく状況が現実にある。トランプはカルトの教祖ではないけれど、状況はかなりカルト的。舞台を見ながら、こんなことまで考えてしまった。
客席の思索を四方八方に広げていく力のある舞台である。おもしろくないわけがない。